2020 Fiscal Year Research-status Report
皮膚創傷治癒におけるTRPA1カチオンチャネルと一酸化窒素の役割と相互作用
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20K18071
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
村田 鎮優 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (90838294)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 創傷治癒 / TRPA1 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)TRPA1ノックアウト(KO)マウスの上皮全層切除モデルにおける創傷治癒検討を実施。 ①肉眼的観察;上皮全層切除マウスを経時的に肉眼的観察を行う(【図1】参照)。治癒がなされていない創部の面積をPhoto Shop (Adobe System, Tokyo, Japan)にて計測を行い、経時的な創傷治癒を数値化して、統計学的に解析を行うこととする。これまでの知見からTRPA1 KOマウスでは創傷治癒の遅延が予想されているがこれを確認する。 ②病理組織学的検討;肉眼的観察の終えたマウスを創傷作成より1,3,6,8,11,14日で各10匹ずつ、頸椎脱臼による安楽死後、4.0% paraformaldehydeにて固定しParaffinに埋没させ5.0μmの厚さに切片作成を行う。これをHematoxylin-eosin(HE)染色とMasson’s Trichrome染色し、上皮全層切除後の肉芽組織を創部の辺縁と創部の中心の2ヵ所で観察しその厚さを観察する。皮膚の創傷治癒において、線維芽細胞の活性化は創傷の閉鎖に重要な役割を演じる筋線維芽細胞を産生する。一方で遷延化した筋線維芽細胞の残存は好ましくない瘢痕、線維化とそれによる組織の収縮、変形を助長させるとの研究報告がなされている。そこでF4/80 anti-macrophage antigen 抗体およびαSMA抗体を用いた免疫組織染色により筋線維芽細胞のカウントを各群で行う。 ③RT-PCRを用いたmRNAの定量;病理組織学的検討で用いた組織を利用し、創傷作成時から瘢痕組織中のαSMA, F4/80, transforming growth factor β1(TGFβ1), collagen 1α2のmRNAの発現量をRT-PCRを用いて定量的に分析する。 上記の①-③に関しては、実験を完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の実績概要で述べた(1)は完了した。2021年、2022年において計画通り以下の(2)、(3)を実施する。 (2)薬剤によるTRPA1制御タイミングと皮膚の創傷治癒反応の関係の検討 TRPA1の活性あるいは阻害が創傷治癒治療にどのような効果を発揮するかを検討する。WTマウスに上皮全層切除モデルを作成し、TRPA1アゴニスト[Allicin(100 mg/kg)]、TRPA1アンタゴニスト[HC-030031(100 mg/kg)、コントロールとして基剤のみを毎日投与(1回/日)する。具体的には上皮全層切除後3日、6日、10日の3通りの投与開始時期でアンタゴニスト投与開始日を設定する。投与方法は腹腔内投与とする。それぞれの投与開始日のグループでコントロール群と14日目でマウスを屠殺し、(1)と同様の評価を行う。 (3)TRPA1とNOのシグナル伝達の関係性の解析 NOはTRPA1のリガンドの1つである事から、創傷治癒におけるTRPA1とNOは一連のシグナルカスケードを形成している可能性がある。一方、神経終末のTRPA1の活性化は血管平滑筋に対してNOの放出を増強するという報告(Aubdool AA: Br J Pharmacol, 2016)もあるため、NOがシグナル伝達のTRPA1の上流か下流に存在するのか検討する。NO自体は不安定であるため、TRPA1 KOマウスに対してNO生成基質であるアルギニンの投与あるいはマクロファージからのNO放出を増強させるリポポリサッカライド(Lipopolysaccharide)を投与したモデルを作成し、(1)と同様の評価を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
(2)薬剤によるTRPA1制御タイミングと皮膚の創傷治癒反応の関係の検討 TRPA1の活性あるいは阻害が創傷治癒治療にどのような効果を発揮するかを検討する。WTマウスに上皮全層切除モデルを作成し、TRPA1アゴニスト[Allicin(100 mg/kg)]、TRPA1アンタゴニスト[HC-030031(100 mg/kg)、コントロールとして基剤のみを毎日投与(1回/日)する。具体的には上皮全層切除後3日、6日、10日の3通りの投与開始時期でアンタゴニスト投与開始日を設定する。投与方法は腹腔内投与とする。それぞれの投与開始日のグループでコントロール群と14日目でマウスを屠殺し、(1)と同様の評価を行う。 (3)TRPA1とNOのシグナル伝達の関係性の解析 NOはTRPA1のリガンドの1つである事から、創傷治癒におけるTRPA1とNOは一連のシグナルカスケードを形成している可能性がある。一方、神経終末のTRPA1の活性化は血管平滑筋に対してNOの放出を増強するという報告(Aubdool AA: Br J Pharmacol, 2016)もあるため、NOがシグナル伝達のTRPA1の上流か下流に存在するのか検討する。NO自体は不安定であるため、TRPA1 KOマウスに対してNO生成基質であるアルギニンの投与あるいはマクロファージからのNO放出を増強させるリポポリサッカライド(Lipopolysaccharide)を投与したモデルを作成し、(1)と同様の評価を行う。 に関して、順次、実施する。
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Causes of Carryover |
本年は国際学会が開催されず、また研究が順調に進んでいるため、マウスの購入費、飼育料に計画との差が生じた。次年度の研究において、マウスの購入費、飼育料に当てる予定である。
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