2021 Fiscal Year Research-status Report
皮膚創傷治癒におけるTRPA1カチオンチャネルと一酸化窒素の役割と相互作用
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20K18071
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
村田 鎮優 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (90838294)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 創傷治癒 / TRPA1 |
Outline of Annual Research Achievements |
TRPA1に関しては様々な生体内の臓器、組織での役割がこれまで明らかにされてきた。しかし、創傷治癒におけるTRPA1の役割に注目した研究は渉猟する限り存在しない。共同研究グループである当大学眼科学講座からは角膜上皮の損傷治癒過程においてTRPA1が深く関与していることが報告された。このことから同じ外胚葉由来の皮膚表皮の治癒過程においてもTRPA1が大きな役割を果たしている可能性がある。本研究の目的は、TRPA1の遺伝子欠失マウスで皮膚欠損モデル作製し、皮膚の創傷治癒過程を組織学的に観察することで、未だ明らかとされていないTRPA1の皮膚の創傷治癒制御機構における神経系から非神経系の情報伝達における役割を解明することであった。我々は、TRPA1-null(KO)および野生型(WT)のを用いて、筋線維芽細胞やマクロファージによる肉芽組織の形成、再上皮化、関連する遺伝子発現を評価した。創傷モデルの確立には、TRPA1-null(KO)および野生型(WT)のC57BL/6マウスを使用した。全身麻酔下でマウス背部皮膚に2個の円形全層切除創(直径5.0 mm)を作製した。一定時間経過後、肉眼観察、組織学、免疫組織化学、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いて治癒の過程を評価した。TRPA1の欠損は、マウスの皮膚創傷治癒過程における肉芽組織の形成と再上皮化を遅らせることがわかった。詳細な解析の結果、TRPA1の欠損は、筋線維芽細胞の出現、マクロファージの浸潤、αSMA、F4/80、Col-1α2のmRNA発現を抑制していることが分かった。これらの結果から、TRPA1がマウスの皮膚創傷治癒に必要であることが示された。TRPA1の欠損は、マクロファージの浸潤とそれに続く線維組織の形成を遅らせ、線維芽細胞の線維化挙動をさらに損なう可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画通りに、上記の研究成果を2021年度内に得ることができた。現在、上記内容に関する論文の執筆は完了し、投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の如く、現時点で得られている成果をもとに論文を執筆し、投稿中である。追加実験等の必要性を検討するとともに、TRPA1の作動薬、阻害薬等を使用した発展的な研究も計画している。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で、研究成果を報告する予定であった国際学会への参加ができなかったことが第一の理由と考える。また、現在、投稿中のジャーナルからの査読を待ち、追加実験等に備えている状況が続いていることも理由の一つである。2022年度は国際的なCOVID-19の感染状況を考慮しながらも、積極的な国際学会への参加を検討している。また、追加実験の指示に備える一方で、TRPA1の作動薬及び拮抗薬を使用した発展的な研究を計画中である。
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