2020 Fiscal Year Research-status Report
前帯状皮質におけるケタミン及びケタミン代謝物の疼痛抑制メカニズムの解明
Project/Area Number |
20K18072
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
山中 学 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (30597084)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 前帯状皮質 / whole cell patch-clamp / LTP / ケタミン / ケタミン代謝物 / NMDA受容体 / 抗不安作用 / 疼痛抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
前帯状皮質(ACC)のII/III層ニューロンにwhole cell patch-clampを適応し、誘発性興奮性シナプス電流(eEPSC)を記録した。 1μMケタミン(KET)及び1μMケタミン代謝物(HNK)によるLTP抑制作用を検討した。結果は、KETとHNKともPresynaptic LTP(Pre-LTP)に抑制効果を認め、Postsynaptic LTP(Post-LTP)には抑制効果を示さなかった。これは、低濃度KETはNMDA受容体に対する抑制効果がない可能性が示唆された。 続いてKETとHNKのNMDA受容体ブロッカーとしての効果を検討した。ACCニューロンからNMDA電流を記録し、KET及びHNKを1μM、10μM、100μMの濃度で効果を検討した結果、1μMではNMDA電流は抑制されなかった。 さらに、NMDA受容体に対するKETと同じ結合部位に結合するNMDA受容体遮断薬(1μM MK-801)の作用を検討した。その結果、1μM MK-801においてもPost-LTPを抑制する効果は認められなかった。 したがって、これらの結果から低濃度のKET及びHNKはNMDAには影響を与えず、Pre-LTPのみ抑制する効果があることが明らかとなった。 これまでにPre-LTPは不安誘発性の慢性疼痛の原因と考えられており、低濃度KET及びHNKは疼痛抑制効果を示す可能性があることが明らかとなったため、その抑制メカニズム及び行動実験により疼痛抑制作用を今後検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
和歌山県立医科大学大学院及びトロント大学生理学講座にて電気生理学研究を重ね脊髄細胞、脳神経細胞にwhole cell patch-clampを適応し記録を取ることが可能である。また、電気生理学的手法には習熟しており、薬理学的検討に対しても行うことができる。ただし、基礎研究に当てる時間が限られていることから当初の計画以上には進行していない。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究経過に沿って、2021年度分に関しての研究を遂行する予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19により、国内及び国外の学会発表がなく、また順調に研究が遂行されたため、マウスの購入費、維持費が少なく済んだ。また、本年は行動学実験を行うため、実験器具に割り当てる予定である。
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