2020 Fiscal Year Research-status Report
エストロゲンレセプターからみた前立腺肥大症の病態解明と新規治療法の開発
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20K18094
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
溝口 晋輔 大分大学, 医学部, 助教 (70751733)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 前立腺肥大症 / メタボリックシンドローム / 肥満 / G蛋白供役型エストロゲンレセプター |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景】メタボリックシンドロームは前立腺肥大症の発症と関連していることが知られており、その要因の一つとして、脂肪細胞の増加に伴う血中エストロゲンレベルの増加が指摘されているが、前立腺組織におけるエストロゲン受容体の関わりは明らかではない。【目的】メタボリックシンドロームにおける前立腺肥大症の発症と前立腺組織におけるG protein coupled estrogen receptor (GPER)の関わりを明らかにするために、肥満モデルラットの前立腺におけるGPERの役割について検討した。【方法】雄Wistarラット(190-210g, n=18) を通常食餌群と高脂肪食群にわけた。さらに高脂肪食群にG1(GPER agonist)、G15(GPER antagonist)を投与した。両群をそれぞれの食餌のみで12週飼育したのち、2週間プラセボ、G1またはG15を連日経口投与した。前立腺側葉を採取し、重量変化とGPERのmRNA発現量について解析し、さらにHEおよびマッソントリクローム染色にて形態と線維化について比較解析した。【結果】高脂肪食群は通常食餌群と比較し、体重、内臓脂肪量、前立腺惻葉重量が有意に増大していた。また前立腺側葉におけるGPERのmRNA発現量は、高脂肪食群で有意に増大していた。G15投与群では、高脂肪食群と比較して、体重および内臓脂肪量に有意な変化は認めなかったが、前立腺側葉重量は有意に減少していた。組織学的評価では、高脂肪食餌群の前立腺側葉は炎症細胞浸潤と著明な線維化を認めたが、HFD-G15群では改善していた。【考察】メタボリックシンドロームの関連する前立腺肥大症の発症には、GPERを介したシグナル伝達経路の関与が示唆され、GPER阻害が新たな治療戦略となる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
G protein coupled estrogen receptor (GPER)の阻害薬であるG15投与群において、前立腺縮小効果が確認された。食餌誘発性肥満モデルラットにおける慢性炎症を背景とした前立腺肥大症の発症について、GPERを介したシグナル伝達経路が関与している可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに肥満モデル群における前立腺側葉肥大と慢性炎症、G15投与による前立腺側葉縮小効果を形態学的に確認している。今後、GPERの下流経路として細胞増殖に関連することが指摘されているEGFR/ERK系について解析し、分子生物学的にもGPERを介した前立腺縮小効果について解析する。さらに膀胱内圧測定検査を行い、GPERの排尿機能への関与の有無についても解析する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの流行による社会情勢のため、学会参加などが発生しなかったため。 学会参加の目途はたっておらず、主に試薬や動物の購入、管理に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)