2020 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム不安定性に着目した浸潤性膀胱がん遺伝子治療の開発
Project/Area Number |
20K18096
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
山田 健司 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (80566232)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ゲノムの不安定性 / Uqcrb / 浸潤性膀胱がん / 発がんのメカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
がんは遺伝子変化の集積に伴う多段階発がんで生じる。ほとんどのがんにおいて、 染色体レベルでゲノムの不安定性がみられ、膀胱がんでも報告がある。またgenomic DNA copy number aberrations (CNA)は、遺伝子変化を知るよい指標とされている。 私たちは、遺伝背景の統一された浸潤性膀胱がんモデル動物を用いてCNAを検討し、 UQCRBという遺伝子が発がんに際してコピー数が増加することを発見した。本研究 では、UQCRBの発がん過程での役割を膀胱がんモデル動物だけでなく、ヒトの細胞 株と膀胱組織を用いて明らかにすることが目的である。さらにUQCRBをターゲット とした浸潤性膀胱がんの遺伝子治療の可能性を探る。 発がんマウスを用いてUqcrbのCNAを経時的に検討し、Severe dysplasia、invasive cancerでゲノムの不安定性が有意に増加していると推察して研究を行った。 また、発がんマウスを用いてUqcrbの発現を抗UQCRB抗体を用いた免疫染色で経時的に検討し12W(severe dysplasia)、26W(invasive cancer)で発現、特に、12W(severe dysplasia)で基底膜細胞等に変化が生じる可能性を検証した。 UQCRBは、マウスでは、発がん早期にゲノムの不安定化が起こり、徐々に安定化することがわかった。発がん早期より発現が上昇し、浸潤がんに移行するに従って低下していた。ヒトにおいては、high gradeのがんではゲノムの不安定化は小さく、浸潤がん部でも発現は小さいことが証明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒト膀胱がん由来の細胞株 (RT4, T24)を用いて機能解析を行った。UQCRBのsiRNAを用いて標的遺伝子をノックダウンし、細胞増殖、アポトーシス関連タンパク、血管新生関連タンパク(VEGF、HIF-1α)、 iNOSにつき評価検討した。いずれも、評価系は動かしていたが、とくにVEGF,HIF-1α,iNOSの評価ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
まずはin vitroでVEGF,HIF-1α,iNOSの評価をすること。BBN自由飲水ラットの膀胱発がんモデルを用いて、in vitroの研究と同様にVEGF,HIF-1α,iNOSの評価を行いたい。
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Causes of Carryover |
膀胱発がん動物モデルで同定されたCNA領域におけるヒトとの相同性について、データベースを用いて検討を行い、ヒトとの相同性が判明している領域より、マウス染色体13領域のUqcrbに着目し、そのorthologにあたるヒトのUQCRB遺伝子を中心として本研究を進めることとなる。UQCRBの発がん過程での役割を膀胱がんモデル動物だけでなく、ヒトの細胞株と膀胱組織を用いて明らかにすることが目的である。計画自体は順調な滑り出しであったがCOVID-19による通常の医療業務が大幅に変更となり、予定していた研究を進めることができなかった。このため次年度使用が生じた。次年度はUQCRBをターゲットとした治療薬としての検討を行いたい。
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