2020 Fiscal Year Research-status Report
腎癌の発育形態と被膜周囲微小環境の病理学的探索および新規リスクモデルの構築
Project/Area Number |
20K18109
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
田中 一 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (50748358)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 局所進行腎細胞癌 / 転移性腎細胞癌 / 浸潤性増殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
局所進行あるいは転移性腎細胞癌の予後は多様であり、従来の病期・リスク分類では、その生物学的悪性度を十分に層別化できていない。今年度、申請者は、腎癌と正常腎実質の境界の画像所見および組織学的所見を解析し、これに見る発育形態の特徴と予後の関係を解析した。はじめに、2008~2018年に申請者の所属施設で手術が施行された局所進行腎細胞癌(pT3a以上 Nany M0)77例において、術前の造影CT画像および摘出標本を用い、上記の解析を行った。画像上の浸潤性境界は全体の39%に認められ、高い特異度をもって組織学的な浸潤性増殖の所見と関連していた。さらに、画像上の浸潤性境界、および組織学的な浸潤性増殖の所見は、いずれも術後再発あるいは腎癌死と強く関連し、それぞれ術前因子、および病理組織学的因子を組み入れた多変量解析において、術後再発の独立したリスク因子であることが示された(論文投稿準備中)。さらに、転移を有する腎細胞癌98例においても、造影CT画像における腎原発巣と正常腎実質の浸潤性境界の有無の意義を解析したところ、画像上の浸潤性境界は全体の41%に認められ、これが腎癌死の独立したリスク因子であり、さらに現在広く用いられているIMDCのリスク分類と組み合わせることで、その予測精度の向上に寄与することが示された(論文投稿準備中)。以上より、1) 一般的に圧排性増殖を特徴とする腎細胞癌であるが、特に局所進行あるいは転移性腎細胞癌においては、無視できない頻度で部分的に浸潤性増殖を呈していること、2) これが比較的高い特異度をもって造影CTで予測可能であること、3) 画像上あるいは組織学的な正常腎実質との浸潤性境界/浸潤性増殖が、既存のリスクモデルの予測精度向上にも寄与しうる重要なリスク因子であることが解明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、概ね順調に経過している。
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Strategy for Future Research Activity |
Radiomicsのソフトウェアを用いた画像解析、および限局性腎細胞癌も含めた拡大コホートにおける腎癌発育形態の組織学的解析を現在進めているところである。
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Causes of Carryover |
学会出張の中止(web発表への変更)、研究内容の一部変更などにより、次年度使用額が生じた。来年度以降の成果発表、および研究に必要な消耗品費等に使用する予定である。
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