2023 Fiscal Year Research-status Report
腎癌の発育形態と被膜周囲微小環境の病理学的探索および新規リスクモデルの構築
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20K18109
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
田中 一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (50748358)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 局所進行腎細胞癌 / 転移性腎細胞癌 / 淡明細胞型腎細胞癌 / 腎実質内浸潤/進展 |
Outline of Annual Research Achievements |
局所進行/転移性腎細胞癌の予後は多様であり、従来の病期・リスク分類では、その生物学的悪性度を十分に層別化できていない。はじめに申請者は、手術が施行された局所進行腎細胞癌77例の術前造影CT画像および摘出標本を用いて腎癌と正常腎実質の境界の画像所見および組織学的所見を解析し、同部の浸潤性境界が不良な予後と強く関連することを示した(Shimada W, Tanaka H, et al. Int J Urol. 2021; 28: 1233-1239.)。転移を有する腎細胞癌98例においても腎原発巣の造影CT画像を用いて類似の解析を行った結果、腫瘍と正常腎実質の浸潤性境界が全体の41%に認められ、これが腎癌死の独立したリスク因子であり、さらに現在広く用いられているIMDCのリスク分類と組み合わせることでその予測精度の向上に寄与することが示された(論文投稿中)。さらに申請者は、局所進行癌に限定しない根治的腎摘除が施行された非転移性淡明細胞型腎細胞癌333例の切除検体を病理学的に評価した。その結果、腎実質内浸潤/進展を40例(12%)に認め、内24例がpT3a以上、16例がpT1-2であった。多変量解析では、pT3a以上、脈管侵襲、WHO/ISUP grade 3-4、腎実質内浸潤/進展が再発の独立したリスク因子であり、ハザード比は腎実質内浸潤/進展で最も高値であった。腎実質内浸潤/進展を呈する症例と呈さない症例の腫瘍組織からDNAを抽出し、腎細胞癌において重要な遺伝子のvariant頻度を解析すると、腎実質内浸潤/進展を呈する症例ではSETD2およびTSC1遺伝子に変異を有する頻度が有意に高かった(論文投稿中)。以上から、組織学的な腎実質内浸潤/進展は従来のTステージとは独立して術後再発リスクに強く関連し、その背景にはよりaggressiveな遺伝子背景があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展しており、記載すべき理由はない。
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Strategy for Future Research Activity |
組織学的な腎実質内浸潤/進展の予後への影響と遺伝学的背景に関する論文を現在投稿中である。今後は、Radiomics解析を用いた腎実質内浸潤/進展の予測、不良な予後の予測を可能とするモデルの作成を進める。
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Causes of Carryover |
Radiomics解析を用いたCTあるいはMRI画像における腎実質内浸潤/進展の予測を試みたが、十分な成果を得ることができなかった。次年度、本研究計画をさらに推進する。
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