2021 Fiscal Year Research-status Report
A new strategy for preventive treatment of recurrent / refractory cystitis with lactic acid bacteria biosurfactant
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20K18117
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岩田 健宏 岡山大学, 大学病院, 助教 (00803082)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | バイオサーファクタント / 尿路感染症 / クオラムセンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年の伊勢志摩サミットでは、薬剤耐性微生物が世界経済に深刻な影響を与えている可能性があると認識され、各国が協調して取り組むことがコミットされた。それに先駆けて日本政府からは薬剤耐性アクションプランが発表され、疾患の予防や抗菌薬の適正使用がますます重要になっている。膀胱炎は一般的な感染性疾患であり、罹患後一年以内にその3分の1が再発を経験すると報告され、繰り返し抗菌薬治療することで病原菌の多剤耐性化のため難治性となる。反復性/難治性膀胱炎の病態として、乳酸菌を中心とした膣の常在菌によるバリアが関与しているといわれており、特に閉経後の女性や性的アクティビティが高い女性はバリアの喪失や慢性炎症による腸内細菌の膣への定着、バイオフィルムの形成によって、膣内の正常細菌叢やその代謝物を含む環境(マイクロバイオーム)が破綻し、膣が腸内細菌のリザーバーとなって多剤耐性菌を供給することが原因とされている。このような問題への一つの解決策として、病原性細菌の病原因子の産生のみを特異的に抑制するクオラムセンシング(Quorum Sensing: QS)阻害剤の開発が、今世紀における感染症治療のブレイクスルーとして世界的に注目されている。我々はこれまでの基礎/臨床研究において、膣に常在する乳酸菌に注目し、それが産生するバイオサーファクタントがQS阻害剤として機能することを見出している。また、本年度は抽出した蛋白を用いて、バイオフィルム形成阻害効果を確認した。反復性/難治性膀胱炎に対するクオラムセンシング阻害剤の臨床応用に向けての橋渡し研究として、先進的リアルタイムイメージング法による実験モデル系と分子生物学的手法を駆使して、新規QS阻害剤の作用機序解明を目指す。さらに、次世代シーケンサーを用いて、QS阻害剤使用前後の臨床検体を多元的かつ網羅的に解析し、QS阻害剤の選択圧の有無を確認する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は抽出した蛋白を用いて、バイオフィルム形成阻害効果を確認した。反復性膀胱炎の原因菌として最も頻度が高いE.coliについてバイオフィルム阻害効果を確認できた。特筆すべきは、ESBL産生E.coli、フルオロキノロン耐性E.coliにおいてもバイオフィルム阻害効果を確認できたことである。様々なPhenotypeのE.coliにおいてバイオフィルム阻害効果の知見を得ることができた。さらに、緑膿菌、腸球菌などの菌種においても同様の実験結果を得ることができている。研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
近く激変が始まる、耐性菌に対する一般医療の実現に向けて、岡山大学発の新規QS阻害剤を開発することを目的とする。産学連携を視野に入れ、開発した製剤は特許化し、可及的速やかに臨床現場において実用化することを目指す。QS機構は様々な病原因子の発現を制御していることから、新たな感染症治療薬の開発において注目すべき標的である。本研究で得られた知見は新たな感染症治療の開発につながるリード化合物になることが期待される。
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Causes of Carryover |
今年度実施したバイオサーファクタント蛋白の抽出の解析にかかる費用が一部節約できたため、次年度使用額が生じた。使用計画としては、次年度実施する岡山大学発の新規QS阻害剤を開発する実験にかかる費用に充当する。産学連携を視野に入れ、開発した製剤は特許化し、可及的速やかに臨床現場において実用化することを目指す。QS機構は様々な病原因子の発現を制御していることから、新たな感染症治療薬の開発において注目すべき標的である。
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