2021 Fiscal Year Research-status Report
アルコール代謝酵素の遺伝子多型に注目した膀胱がん発生メカニズムの解明
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20K18119
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Research Institution | Kyushu Central Hospital of the Mutual Aid Association of Public School Teachers |
Principal Investigator |
正岡 寛之 公立学校共済組合九州中央病院(臨床研究センター), 臨床研究センター, 研究員 (80848010)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 膀胱がん / アルコール / アルデヒド脱水素酵素2 / アセトアルデヒド |
Outline of Annual Research Achievements |
アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドは発がん物質であると報告されており、食道がんや頭頸部がん発症との関連が示されているが、膀胱がん発症とアセトアルデヒド曝露の関連は明らかではない。アルコール、アセトアルデヒドの代謝に重要な役割を示す、アルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)とアルコール脱水素酵素1B (ADH1B)に着目し、それらの遺伝子多型と膀胱がんの関連を症例対照研究で検証した。 愛知県がんセンター病院を受診した患者の血液検体から抽出したDNAを用いて、リアルタイムPCRにより、ALDH2とADH1Bの遺伝子多型を測定した(ALDH2; rs671, ADH1B; rs1229984)。昨年度に得られた2006年~2013年の患者データと、2001年~2005年に受診した患者のデータを統合した。膀胱がん患者125名、年齢と性別をマッチングさせた対照患者1250名の飲酒、喫煙習慣の情報を利用して、条件付きロジスティック回帰分析で解析した。喫煙・飲酒を調整したところ、ALDH2 Glu/Lysの膀胱がん罹患に関するオッズ比は2.15 (95%信頼区間:1.39-3.33)、Lys+のオッズ比は、2.05 (95%信頼区間:1.33-3.17)であった。非飲酒者では上記の有意な関連は消失しており、ALDH2遺伝子多型と飲酒が関わり合って膀胱がんのリスクを上昇させており、アセトアルデヒドは膀胱がん発症の一因となっている可能性が考えられた。一方、ADH1B遺伝子多型と膀胱がんの関連は、有意なものではなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19による影響があり、解析に時間を要した。また、リアルタムPCRに遅延が生じたため、アルコール脱水素酵素1C (ADH1C)とシトクロームP4501A1 (CYP1A1)の遺伝子多型測定が行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
媒介分析を行い、ALDH2、ADH1B が膀胱がんにおよぼす影響が、直接効果によるものか、飲酒行動を介した間接効果によるものなのかを検証する。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響で、成果発表のための旅費を使用しなかった。今後、本研究課題の成果発表などに予算を使用する予定である。
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