2020 Fiscal Year Research-status Report
HOTAIRによる腎癌悪性化メカニズムの探索と治療への応用
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20K18131
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
方山 博路 東北大学, 大学病院, 助教 (90466558)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 腎癌 / エクソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの基礎研究では、HOTAIR-IGFBP2経路が活性化すると、臨床データからはステージと相関し、予後不良であり、基礎データからは増殖能は変化せず、浸潤能、主に遊走能が亢進することを明らかにした。臨床上、腫瘍径が小さくても転移を来す予後不良な腎癌はしばしば経験することから、HOTAIRーIGFBP2経路が限局性腎癌ではなく、進行性腎癌において重要な役割を果たしていることが示唆された。 HOTAIR-IGFBP2経路が主に浸潤能を中心として腎癌悪性化に関与する詳細な解析を行うため、IGFBP2蛋白質に着目して研究を行った。 HEK293細胞株に、GFP標識したIGFBP2を過剰発現させ、電子顕微鏡にてIGFBP2が分泌蛋白特有な分布を示すことを確認した。IGFBP2はエクソソーム分泌されることも報告があり、それを裏付ける結果となった。 ドキシサイクリン誘導性にIGFB2を過剰発現するHEK細胞を樹立し、プロテオーム解析を行った。免疫沈降法を用いて、IGFBP2に相互作用する蛋白質CMF1(Cancer Malignancy Factor1)を質量分析器により同定した。CMF1についてもGFP標識した過剰発現株を用いて、IGFBP2と同様に分泌蛋白特有な分布を示すことを確認した。CMF1はすでにそれ自体がonocogene として報告されており、転移能が他臓器の癌で亢進することが報告されていることから、HOTAIR-IGFBP2経路の下流遺伝子として矛盾の無い結果であった。 以上により、IGFBP2-CMF1という新しい腎癌悪性化機序を同定することができた。また、IGFBP2およびCMF1がエクソソームに分泌されていることが証明できれば、腎癌のバイオマーカーとなる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
IGFBP2のプロテオーム解析を行うにあたり、加齢研との共同研究を行った。covid-19の感染拡大にともない、2020年4月に予定していた共同研究は行動指針がレベル3に引き上げられたことから延期となり、9月から共同実験を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
CMF1の機能解析、プロテオーム解析を行い、IGFBP2との相互作用について詳細に検討する。患者検体を用いて、IGFBP2とCMF1の発現とTNMステージ、予後との相関を調査する。 エクソソーム内のIGFBP2やCMF1の発現が、早期診断や薬剤の効果予測につながる有用なバイオマーカとなる可能性があると考えており、患者検体および細胞株のエクソソームの回収および解析を行う。
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Causes of Carryover |
covid19の感染拡大に伴い、行動指針レベルが変更となり、共同研究を開始する時期が予定よりも遅れたため、次年度使用額が生じたものと推察する。2022年度の助成金と併せて、プロテオーム解析にかける費用として使用する予定である。
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