2021 Fiscal Year Research-status Report
子宮頸部胃型腺癌におけるオルガノイド培養の確立と治療方法の開発
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20K18157
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田口 歩 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60756782)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 子宮頸がん / HPV / オルガノイド培養 / プレシジョンメディシン |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度に引き続き子宮頸がんオルガノイドの樹立を行った。2021年度までに扁平上皮癌(SCC)オルガノイドを2例、腺癌オルガノイドを3例、小細胞癌(SCCC)オルガノイドを2例作成した。SCCCオルガノイド以外は2-6継代のみ継代可能であった。 細胞株化に成功したSCCCオルガノイドについて、全エクソン解析とRNA seq解析を実施した。その結果、原発腫瘍とSCCCオルガノイドともにKRAS p.G12Dの遺伝子変異を認めた。樹立したSCCCオルガノイドに対して、KRAS経路にあたるMEK阻害剤であるトラメチニブを添加した結果、IC50:6.8 nMと抗腫瘍効果を認めた。また、樹立したSCCCオルガノイドをもとにマウスゼノグラフとモデルを作成した。In vivoでの薬剤感受性試験を行った結果、トラメチニブ投与群では有意な腫瘍増殖抑制効果を認めた(ログランク検定、p=0.001)。 子宮頸がんの発癌には、HPVゲノムのヒトゲノムへの組み込みが重要である。HPVゲノムの組み込みはHPV由来のがん遺伝子であるE6・E7の恒常的発現の他、組み込み部位周辺のがん遺伝子の発現上昇につながることが知られている。樹立したSCCCオルガノイドのRNA seq解析によりウイルス・ヒトキメラRNA解析を行った結果、HPV18ゲノムはChr8(8q24.21)に組み込まれていることがわかった。また、組み込み部位の下流にはがん遺伝子であるMYCが位置しており、SCCCオルガノイドでのMYCの発現上昇を確認した。 MYCを標的とした治療法が、このSCCCオルガノイドの新たな治療標的となる可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
子宮頸部胃型腺癌オルガノイドを樹立する予定であったが、希少性が高く、東京大学医学部附属病院では1例も認めなかった。このため、同様に希少癌であり、かつ難治性腫瘍である子宮頸部小細胞癌オルガノイドの樹立と、プレシジョンメディシンを検討した。マルチオミックス解析を用いて、治療標的の絞りこみを行えており、またKRAS経路阻害剤については、in vitro, in vivoでの検討も実施できており、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度、2021年度に引き続き、子宮頸がんオルガノイドの樹立を試みる。 2021年度に樹立したSCCCオルガノイドについてはMYC阻害剤の抗腫瘍効果の確認をin vitro, in vivoで行う。また、同部位にHPVが組み込まれているほかの子宮頸がん検体についても、組み込み部位とMYC発現との関連を解析する。 さらに、子宮頸がんオルガノイド樹立の最適化も試みる。
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Causes of Carryover |
2021年度は樹立したオルガノイド一例を詳細に解析したが、最終年度にゲノム解析やRNA seq解析を複数検体で行うために次年度使用額が生じた。
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Research Products
(7 results)