2020 Fiscal Year Research-status Report
ナノ粒子を用いた新生児低酸素性虚血性脳症に対する新規治療法の開発
Project/Area Number |
20K18165
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
信田 侑里 滋賀医科大学, 医学部, 医員 (60823896)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / 新生児低酸素性虚血性脳症 / 脳性麻痺 |
Outline of Annual Research Achievements |
フリーラジカル除去作用をもつポリグリセロール機能化ナノ粒子を用いた新生児低酸素性虚血性脳症の治療法の開発が本研究の目的である。昨年度はより高いフリーラジカル除去作用を持たせるべく、ナノ粒子の合成法の改良を行った。従来は、超常磁性鉄ナノ粒子(SPION)をグリシドールに分散させて加熱することで、SPIONの表面をポリグリセロール(PG)でコーティングしたSPION-PGを得ていた。表面のPG層が厚いほど、生体内での分散性が高く、血中投与した際の病変への集積性に優れること、フリーラジカル除去作用が増強することなどが期待されることから、PG層をより厚くすることに着眼し、合成法を改良した。具体的には、まず従来の方法でSPION-PGを合成し、そこに無水コハク酸を反応させてカルボキシル基を導入し、SPION-PG-COOHとした。SPION-PG-COOHをグリシドールに分散させて再度加熱し、2度目のPG修飾を施した。こうして得られた合成ナノ粒子SPION-PG-COOH-PGは、PG末端に導入されたカルボキシル基を起点としてグリシドールが開環重合し、新たなPG層を形成していることがFTIRスペクトラムで確認された。SPION-PG-COOH-PGの流体力学的径は約45nmでばらつきは小さく、(SPION-PGの流体力学的径は約20nm)、水に対して良好な分散性を示した。SPIONの径が約8nmであることから、PG層の厚みは約6nmから約18nmに増加し、約3倍になったことが分かる。SPION-PG-COOH-PGのフリーラジカル除去作用について、APFを用いた検討を行ったところ、SPION-PGと比較して、約2倍のフリーラジカル除去作用があることが分かった。これはPG層が厚くなったことによりナノ粒子の表面積が大きくなり、PG末端の水酸基の数が増加したためと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍ではあるが、本年度の研究は研究室内で単独で行う研究であり、予定通り実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、SPION-PG-COOH-PGをマウスHIEモデルに投与し、神経学的予後の改善が得られるか、病理組織学的検討で不可逆的な神経損傷の軽減が認められるかを検討する予定である。まずはナノ粒子を脳室内に直接注射し、高濃度のナノ粒子を病変部に送達して効果が認められるかを検討する。ナノ粒子を静脈内投与し病変に集積するかについての検討も必要であるが、まずはナノ粒子のHIEに対する治療効果の有無について検討することが研究を推進する上で優先されると考えられるためである。HIEへの治療効果が認められれば、SPION-PG-COOH-PGを蛍光標識し、生体蛍光イメージングシステムを用いて脳病変への集積があるかを検討し、さらに静脈投与でHIEの治療効果があるかを検討する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は化合物の合成が主とした研究であり、動物実験までは実施しなかったため。
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