2022 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ粒子を用いた新生児低酸素性虚血性脳症に対する新規治療法の開発
Project/Area Number |
20K18165
|
Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
信田 侑里 滋賀医科大学, 医学部, 医員 (60823896)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 新生児低酸素性虚血性脳症 / ナノ粒子 / フリーラジカル |
Outline of Annual Research Achievements |
子宮内もしくは分娩時の低酸素環境によって引き起こされる新生児低酸素性虚血性脳症(Hypoxic Ischemic encephalopathy:HIE)は、脳性麻痺などに代表される中枢神経障害の原因となり、現在の周産期医療における最も重篤な疾患のひとつである。新生児HIEの治療としては、現在、治療効果が確認されているのは脳低温療法のみであるが、新生児HIEの発症率を11%低下させるに留まり、新たな治療戦略が求められて久しい。新生児HIEの病態の鍵となるのが低酸素や虚血・再灌流に伴い発生する活性酸素種(Reactive Oxygen Species:ROS)であるが、本研究では、強力なROS除去能を持つポリグリセロール修飾ナノ粒子をマウスHIEモデルに投与することで、不可逆的な神経障害を防ぎ、神経学的予後を改善し得るか、について検討を行った。2020年度はナノ粒子の改良を行い、フリーラジカル除去能をもつナノ粒子表面のポリグリセロール層を二重にし、より強力なフリーラジカル除去能を持たせることに成功した。2021年度は安定したHIEマウスモデルの作製と、治療効果判定に最適な軽傷HIEモデル作製の条件を確立した。2022年度はMRIを用いた新生児マウス脳の撮像と病変評価についての検討を行った。4.7T MRIの3Dモードを応用することで小さな新生児マウス脳を精細に撮像することに成功し、冠状断における線条体および海馬の萎縮率を評価し得た。MRIで病変を評価することの利点は、同一個体で急性期と慢性期の病変を経時的に評価できることである。さらには、ナノ粒子の核として超常磁性鉄を採用しているため、ナノ粒子の分布についても同時に評価することができる。現在、HIEマウスモデルにナノ粒子を投与し、MRIを用いて脳萎縮率およびナノ粒子の分布についての検討を行っているところである。
|