2020 Fiscal Year Research-status Report
胚の老化誘導因子CXCL5の抑制による高齢不妊患者の治療法と老化の診断方法の開発
Project/Area Number |
20K18172
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
川越 雄太 国際医療福祉大学, 医学部, 研究員 (10609077)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | CXCL5 / 老化 / バイオマーカー / 着床能改善 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、我々が見出した着床前期胚の老化誘導因子であるCXCL5に関するマウスでの知見をヒト胚に応用し、CXCL5を用いたヒト胚の老化診断方法の開発と、CXCL5シグナルの抑制による妊娠率改善効果についての検証を目的として研究を行なっている。予備実験として、高齢マウスから採取した卵巣構成細胞で老化に伴うCXCL5のmRNAレベルでの発現増加を確認しているが、ヒトの卵巣構成細胞でも同様に老化に伴うCXCL5の発現増加が認められるか否かの確認を行なった。体外受精治療の採卵を行なった際に非侵襲的に得られる検体である顆粒膜細胞、卵丘細胞を用いてCXCL5の発現量を測定した。その結果、どちらの細胞でも患者の年齢と相関してCXCL5の発現量が増加することを確認した。しかし、今回測定を行なった検体では、それぞれの卵子の体外受精の臨床成績(受精率、胚発生率、着床率、流産率、臨床妊娠率)との相関関係は認められなかった。本年度に測定を行なった検体は47検体であり、また、全ての患者で胚移植は行なっていないため、臨床成績との相関関係が見られなかった一因と考えられた。次年度以降はさらに検体数を増やし、同様の検証を継続する予定である。 本研究で予定しているCXCL5抑制によるヒト胚の質の改善効果を検証するin vitro試験に関しては、本年度中にCXCL5に対するヒト化中和抗体の作成を行なった。次年度はこれらの抗体を用いてヒト胚のCXCL5シグナル抑制効果の有効性についての検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当研究は高齢不妊患者のサンプルを用いて行う研究であり、研究の遂行には患者からの同意が得られたサンプルを用いる必要があるが、当学の体外受精治療施設の稼働が遅れており得られるサンプル数に限りがあったため研究が遅れている。また、実際にヒトの胚を用いたin vitro試験を行うためのヒト化抗体の作成に想定よりも時間がかかったため研究が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、ヒトの卵巣構成細胞でも老化に伴ってCXCL5の発現量の増加が認められた。今後は、さらなるサンプル数の増加により、ヒト胚の質が低下するCXCL5の発現量の閾値の検討を行う。また、CXCL5の発現量と臨床成績の相関関係に関しても引き続き検証を行う。また、CXCL5のヒト化中和抗体の作成にも成功したため、実際にヒトの凍結余剰胚を用いた胚の質の改善効果のin vitroでの検証実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度に使用予定であった消耗品に関しては全て購入したため次年度使用分が生じた。次年度に胚培養消耗品購入費として使用する予定である。
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