2022 Fiscal Year Annual Research Report
胚の老化誘導因子CXCL5の抑制による高齢不妊患者の治療法と老化の診断方法の開発
Project/Area Number |
20K18172
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
川越 雄太 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (10609077)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | CXCL5 / 胚老化 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢不妊の主な原因は着床前期胚の質の低下であるが、現在のところ高齢患者の胚の質を改善する方法はない。また、胚の老化を診断する方法も確立されていない。我々は、胚の老化因子としてC-X-C motif chemokine 5 (CXCL5) をヒト胚盤胞の網羅的遺伝子発現解析により見出し、マウスを用いた研究で老化に伴い卵丘細胞でのCXCL5の発現量の増加、体外受精胚のCXCL5シグナル抑制による高齢マウス胚の妊娠率改善効果を示した。本研究ではCXCL5に関するマウスでの知見をヒト胚に応用し、ヒト胚の老化診断方法の開発と、 CXCL5シグナル抑制による妊娠率改善効果についての検証を目的として研究を行なった。 体外受精での採卵の際に卵子卵丘細胞複合体(COCs)が採取されるが、COCsから卵丘細胞を一部採取し各卵丘細胞でのCXCL5の発現量を測定した。その結果、ヒトの卵丘細胞でも年齢に相関してCXCL5の発現量が増加した。COCsから卵丘細胞を採取するためそれぞれの卵子の培養成績との相関を確認することが可能であるため、受精後の胚の培養成績とCXCL5の発現量の相関関係を評価した。今回測定を行なった300検体では、各卵子の体外受精後の臨床成績(受精率、胚発生率、良好胚獲得率)と卵丘細胞でのCXCL5の発現量には相関関係は認められなかった。また、本年度に測定を行った患者のうち、一部の患者のみ胚移植を実施したため妊娠率との相関関係は見られなかった。今後はこれまでに測定を行った患者の胚移植を行い、CXCL5と妊娠率との相関関係について検証を行う。 本研究で予定したCXCL5抑制によるヒト胚の質の改善効果を検証するin vitro試験に関しては、CXCL5に対するヒト化抗体の作成まで完了している。今後この抗体を用いてヒト胚のCXCL5シグナル抑制効果の有効性についての検討を行う予定である。
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