2020 Fiscal Year Research-status Report
Effects of COMT activity and salt-sensitive hypertension on preeclampsia
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20K18175
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
佐藤 杏奈 順天堂大学, 医学部, 助教 (20869630)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マグネシウム欠乏 / COMT / 2-methyoxyestradiol / 塩分感受性高血圧 / 妊娠高血圧腎症 / NaCl共輸送体 |
Outline of Annual Research Achievements |
妊娠高血圧腎症(PE)既往は閉経後塩分感受性高血圧(SSH)、PE母体児における代謝高血圧疾患リスクとの関連が示唆され、遺伝素因を背景とした共通の分子機構を有する可能性がある。2-methoxyestradiol(2-ME)はマグネシウム(Mg)依存性酵素であるcatechol-o-methyltransferase (COMT)により産生されるエストロゲン終末代謝産物であり、2-ME欠乏はPE惹起と関連する。本研究ではMg欠乏がCOMT活性に及ぼす影響、2-ME欠乏とSSH発症の相関を遺伝的COMT活性の異なる2系統のマウスを用いて解析した。雄マウスではMg欠乏は遺伝的COMT低活性を有するDBA/2Jマウスでのみ高塩分負荷で有意なCOMT活性低下とSSHを発症した。遺伝的強活性を有するC57BL/6JマウスでもCOMT阻害剤によりSSHが惹起された。両SSH群では腎臓のNaCl供輸送体経路が活性化しており、2-ME投与は本経路の抑制と降圧効果を示した。雌DBA/2Jマウスにおいては卵巣摘出マウスのみMg欠乏環境下で有意なCOMT活性低下とSSHが発症した。以上より、Mg欠乏は遺伝的COMT低活性との相互作用により、2-ME欠乏を惹起し、SSH発症に寄与する事が示唆された。雌DBA/2Jマウスの結果は、閉経後女性でのSSH発症リスク上昇を示唆した。また、2-ME欠乏は閉経後SSH、PEに共通する分子機構である可能性が高い。本研究において、遺伝的なCOMT活性低下とMg欠乏がさらなるCOMT不全と2-ME欠乏を惹起し、SSHを誘導する事が明らかとなり、COMT活性を鑑みたMg欠乏是正の必要性が示唆された。雌マウスに正常Mg、低Mg食を与えて血漿Mg値が変化した後に妊娠させたモデルでは、DBA/2Jマウスでも妊娠中の血圧にMg依存性の変化は認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的のひとつであったMg欠乏、高塩分負荷で発症する高血圧の分子機構解明に関して、COMT不全/2-ME欠乏に伴う腎臓NaCl共輸送体活性化が発症機構であることを解明した。2020年度の研究では、臓器COMT活性測定方法の確立(全methyltransferase activityとCOMT阻害剤使用下でのmethyltransferase activityの差をCOMT activityとする)ができたことがCOMT不全を裏付けるための推進力となった。血中2-ME測定は島根大学において質量分析計 SHIMADZU LCMS-8050と2-ME同位体(ULM-8137 SIサイエンス株式会社)を用いた計測系がヒトでは確立されているが、マウスでは血中2-ME濃度が感度以下で測定できない点が今後の課題ではある。妊娠高血圧腎症とMg欠乏の研究は、妊娠中の高塩分負荷などプロトコールを見直す必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
①Mg欠乏下で作成した妊娠マウスでPE様表現型を呈するかMg欠乏のみでは血圧変動は起こらなかった。我々のこれまでの研究から、COMT不全はAⅡ少量負荷(Ueki, N et al, Hypertension, 2017)、高脂肪食負荷(Kanasaki, M et al, Scientific Reports, 2017)や塩分負荷(Kukmagai, A et al, Hypertension, 2021)などなにか条件が加わったときに血圧上昇や耐糖能異常などを惹起することがわかっている。COMT阻害剤使用下では妊娠というトリガーのみでPE様表現型を呈する事がしめされた(Kanasaki K, Nature, 2008)がMg欠乏のみではCOMT阻害が完全ではないため妊娠中の高エストロゲン状態では十分は2-MEが産生されると推測される。今後は低Mgに高塩分負荷や少量AII負荷などを追加して検討していく。 ②PEヒト臨床サンプルバンクを作成し、血漿Mg・2-ME・Homocysteinen濃度、COMT活性、COMT遺伝子多型・haplotypeと臨床パラメーターの解析を行うすでに順天堂大学産科婦人科学講座(分娩件数:年間1500例)において、倫理委員会の承認も得ているので、今年度からサンプル採取を開始する。妊婦の血清と随時尿を経時的に採取、初期段階で母体遺伝子多型分析のため単核球も採取する。採血は妊娠初期、中期、後期(分娩時)、産褥期に行い、分娩時は胎盤を採取する。また、硫酸マグネシウムを使用する場合にも、投与直前に採血を行う。目標症例は各群(正常妊娠、PE群)各50例とする。血圧推移は妊婦検診時の測定値と自宅血圧や入院中の測定値を参考にする。
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Causes of Carryover |
本研究においてELISA法(Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay)による測定を予定していたが、今年度ではなく次年度使用計画としたため。
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