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2020 Fiscal Year Research-status Report

腟細菌叢による腟内恒常性維持機構の解明

Research Project

Project/Area Number 20K18177
Research InstitutionNihon University

Principal Investigator

高田 和秀  日本大学, 医学部, 助教 (60848711)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2024-03-31
Keywords腟細菌叢 / 乳酸桿菌 / 腟上皮細胞
Outline of Annual Research Achievements

細菌性腟症などの腟細菌叢のディスバイオーシスは、性感染症や早産のリスクを上昇させる。理想的な腟細菌叢はLactobacillus優位であるとされるが、L. crispatusなど単一の菌種が細菌叢の大半を占める場合もあり、そのメカニズムはまだ完全には解明されていない。それゆえ、腟細菌叢の構成を何が制御しているのかを検討することは、腟内の恒常性維持機構の解明に重要である。
そこで今年度はまず腟内優位菌種であるLactobacillus同士の影響を検討した。主に腟由来のLactobacillusの培養上清をそれぞれの生菌に加え、その影響を検討した。その結果、全般的にLactobacillus同士がお互いの増殖を抑制する傾向は見られなかった。またEscherichia coli、GBSやGardnerella vaginalisの生菌にLactobacillusの培養上清を加えたところ、全体的に抑制する傾向が見られた。 逆にこれら病原体の培養上清は、Lactobacillusに対しほとんど影響を与えなかった。以上から単一のLactobacillus中心の細菌叢になる理由としては、Lactobacillus同士の競合ではなく、何らかのメカニズムによって宿主側の選択が行われている可能性が示唆された。
また腟上皮細胞株をTNF-αやIFN-γで刺激したところ、培養上清中のIL-33濃度が上昇した。Th2型の免疫応答を惹起するalarminとして知られているIL-33の腟上皮における役割はまだ不明な点が多い。
Lactobacillus優位の細菌叢はヒトのみに認められる特徴であり、宿主側によるLactobacullusの選択機序が明らかになれば、Lactobacillusとヒトの共進化を説明する根拠の一つになりうると考える。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

コロナ禍による非常事態宣言で出勤が制限されるなど等の理由により、十分な研究時間の確保が出来ず、やや遅れている。
Lactobacillus同士の影響については、Lactobacillusにベクターなどを用いてGFPを発現させる予定であったが、導入が上手くいかなかったため概要に記載した通り、培養上清を用いた比較検討に切り替えた。その結果、研究実績の概要でも述べた通りLactobacillus同士の増殖に対する検証を行うことができた。しかし生菌同士の比較はまだ行えていないため、他の比較方法を検討中である。
生体との相互作用については、腟上皮に加えて頸管や胎盤におけるLactobacillusの役割の検証を並行して行っている。腟上皮細胞ではまずIL-33を腟上皮細胞株が産生するのかを検証したところ、皮膚上皮細胞ではIL-33を産生誘導することで知られているTNF-αやIFN-γ刺激で、同様にIL-33の培養上清中の濃度が上昇した。しかしこの作用に対して、LactobacillusやGardnerellaなどの病原体がどのような修飾作用を持ちうるのかをまだ検証できていない。また胎盤のトロホブラストの浸潤能をL.crispatatusが促進することを現在In vitroで検証してきている。生菌で有意に浸潤することは明らかになったが、L.crispatus由来の可溶成分の関与を検証するため、L. crispatusの培養上清を用いた検証を現在行っている。また促進効果が単なるTLR刺激による一般的なものでないことを検証するために、TLRリガンドを添加して検証を現在行っている。

Strategy for Future Research Activity

次年度は腟上皮細胞の培養上清をLactobacillusの生菌に加えるなどして、宿主側からのLactobacillusの選択に関わる因子の検討を中心に行っていく予定である。Lactobacillus同時の生菌での増殖に対する影響を検討するため、遺伝子を抽出してリアルタイムPCRによる検討が可能か検証していく予定である。
細胞と菌の相互作用に関しては、Lactobacillusの培養で一般的であるMRSミディウムが、細胞の種類によっては細胞毒性を有する可能性が判明した。そのため現在NYC IIIミディウムの細胞毒性を検討している。もしNYC IIIミディウムの方が細胞毒性が低い場合は、こちらのミディウムに切り替え実験を行っていく。またNYC IIIミディウムの場合、MRSミディウムでは腟内優位Lactobacillusの内、唯一培養困難なL. inersも培養可能になるため、L. inersのNYC IIIミディウムにおける培養系の確立を目指す。L. inersは腟内優位Lactobacillusの中でも、ディスバイオーシスに繋がりやすいなど他のLactobacillusとは異なった特性を持つ特性を持つ。しかし、その培養条件の困難さからL.inersを用いた実験の報告は、他のLactobacillusを用いたものより少ないため、腟内の恒常性維持において有用な結果が得られることが期待できる。また、近年の研究報告から、腟内と腸内環境の相互作用の存在も示唆されてきている。腟内恒常性維持機構の解明のために、多臓器との相互作用の観点からも検証するサイトカインの選定などを行っていきたい。

Causes of Carryover

学会参加のため旅費として計上していた部分が、コロナ禍の影響でオンライン開催や延期となったため、使用しなかったのが主な理由である。次年度もコロナの影響はまだ不明であり、状況により学会の現地参加が困難な場合もあるため、使用しなかった場合は試薬などの消耗品で使用することを計画している。

  • Research Products

    (6 results)

All 2021 2020

All Presentation (4 results) (of which Invited: 2 results) Book (2 results)

  • [Presentation] ヒト不死化腟上皮細胞におけるIL-33とthymic stromal lymphopoietin(TSLP)産生の検討2020

    • Author(s)
      高田和秀,相澤(小峯)志保子, Trinh Duy Quang,早川 智
    • Organizer
      第48回日本臨床免疫学会総会
  • [Presentation] 細菌性腟症原因菌と腟常在菌が子宮頸管上皮細胞の 抗菌ペプチド産生に及ぼす影響2020

    • Author(s)
      松田恵里那,高田和秀,相澤志保子, 川名 敬,早川 智
    • Organizer
      第48回日本臨床免疫学会総会
  • [Presentation] 腸管と女性生殖器のマイクロビオータ:隣どうしの誼2020

    • Author(s)
      早川 智, 髙田和秀, 高野智圭, 相澤志保子
    • Organizer
      ヤクルト・バイオサイエンス研究財団 第29回腸内フローラシンポジウム
    • Invited
  • [Presentation] 女性生殖器のマイクロバイオータ2020

    • Author(s)
      早川 智,高田和秀,林田真吾, 高野智圭,相澤志保子
    • Organizer
      第48回日本臨床免疫学会総会
    • Invited
  • [Book] Reproductive Immunology 1st Edition, Chapter 20: Interactions between the epithelial barrier and the microbiota in the reproductive tract2021

    • Author(s)
      Takada K, Komine-Aizawa S, Tsuji NM, Hayakawa S.
    • Total Pages
      460
    • Publisher
      Academic Press
    • ISBN
      978-0-12-818508-7
  • [Book] ヒト常在菌叢と生理機能・全身疾患, 第六章女性生殖器常在菌・感染微生物と周産期疾患2020

    • Author(s)
      髙田和秀, 早川 智
    • Total Pages
      325
    • Publisher
      シーエムシー出版
    • ISBN
      978-4-7813-1519-5

URL: 

Published: 2021-12-27  

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