2020 Fiscal Year Research-status Report
ステロイド剤は羊膜を脆弱化しpreterm PROMのリスク因子となりうるか?
Project/Area Number |
20K18182
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
岡崎 有香 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 周産期・母性診療センター, 医師 (70816967)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 前期破水 / 早産 / 全身性エリテマトーデス / 羊膜 / グルココルチコイド |
Outline of Annual Research Achievements |
妊娠中もステロイド投与がほぼ必須な代表疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)合併妊娠では周産期合併症が多く中でも早産が高率に発生する。早産にはグルココルチコイドが関連しているとする報告は数多くみられるものの、そのメカニズムは不明である。我々はステロイドが羊膜を減弱化し、前期破水のリスク因子となると仮説をたて、そのメカニズムを含めて検証することを目的とした。これまでにヒト卵膜を用いた検討において以下のような結果を得た。 1. 羊膜間葉系細胞より抽出したRNAでマイクロアレイを行い、DEX投与による網羅的発現変動遺伝子解析を行ったところ、発現変動遺伝子には、免疫反応や炎症反応関連遺伝子などに加えて、細胞接着関連遺伝子が多く含まれていた。なかでも、cadherinやintegrinなど細胞接着に大きく関わる遺伝子が大きく変動していた。このことより、羊膜間葉系細胞においてDEXにより細胞接着関連遺伝子発現が変動し羊膜脆弱性に影響を与えていることが示唆された。 2. SLE合併妊娠の治療に用いられる免疫抑制剤としてタクロリムスを用いた遺伝子発現解析では、細胞接着関連遺伝子に変動はみられなかった。 皮膚でのグルココルチコイドによる発現変動遺伝子には細胞接着関連の因子を認め、本検討と似た変動を示していた。ステロイドの影響は組織特異性が高いと言われているが、羊膜は皮膚と類似した影響を受ける可能性がある。皮膚へのステロイドの副作用としてよく知られた皮膚萎縮や創傷治癒遅延などと似たことが羊膜でも起こり前期破水につながる可能性がある。タクロリムスでは羊膜脆弱性に影響しない可能性があり、SLE合併妊娠のよりよい治療に結びつけられるよう検討を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DEXが直接結合している候補遺伝子を明らかにするためにChIP-seq解析を当初予定していたが、羊膜から分離できる細胞数が少なくChIP-seqには不向きであった。その代替としてATAC-seqやCUT and RUNに切り替えて現在検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はDEXの作用メカニズムを探るべく以下を予定している。 検討1.次世代シークエンサーを用いてATAC-seqやCUT and RUNを行いDEXが直接結合している候補遺伝子を明らかにする。またその遺伝子を転写活性あるいは抑制して細胞接着を減弱させているのか、そのpath wayを明らかにする。 検討2. SLE合併妊娠時にも使用しているステロイド以外の薬剤である免疫抑制剤を羊膜間葉系細胞の培養中に添加した場合では、DEXで惹起される細胞脆弱化は起きないかどうか、RT-qPCRでコラーゲンやOccludin遺伝子発現で確認し、羊膜の脆弱化を来さない薬剤創成に向けた基礎データ抽出につなげたいと考えている。
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Causes of Carryover |
ECIS測定機器の借用費、また細胞培養培地、添加因子、細胞刺激用試薬、細胞分離用酵素、qRT-PCR用の試薬、ATAC-seq関連試薬および抗体、培養ディッシュ、ピペットなどガラス・プラスチック器具を購入するため。またRNAseq解析費用を計上した。
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Research Products
(1 results)