2020 Fiscal Year Research-status Report
マウス子宮筋中層における新規メッシュ構造の生理学的意義
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20K18186
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
鏡 京介 金沢大学, 附属病院, 助教 (80748616)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 組織透明化 / 子宮筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
組織透明化技術を用いたマウス子宮筋の解析から、これまで認識されてこなかった新たな子宮筋構造を同定した。全身で緑色蛍光を発するCAG-EGFPマウスの子宮を透明化したところ、EGFP蛍光シグナルの強度差から子宮筋層と内膜組織に明瞭なコントラストが生まれ、これにより子宮筋層を明瞭に描出することができ、CAG-EGFPマウスが子宮筋解析に適したモデルであることが明らかになった。このマウスモデルを用いることで、管腔構造を呈する子宮の遠位・近位を問わず、すべての領域で内輪筋と外縦筋の間にメッシュ状の中間層が存在することを明らかにした。光シート顕微鏡で取得した連続画像を詳細に解析すると、内輪筋に起始した筋線維束が外縦筋に連絡し、内輪と外縦を橋渡しする構造を呈していた。この連絡が左右交互に認められ、全体としてメッシュ状構造を形成していることが分かった。げっ歯類の子宮筋構造においては、このようなメッシュ状構造の存在を説明した報告はなく、今回透明化技術を用いることで初めて明らかにされた新たな構造であることが分かった。 次にその構造的意義を検証するため、メッシュ状構造付近に存在する細胞特性について免疫組織化学による解析を行った。この領域にはCD31陽性の血管構造が豊富に観察され、メッシュを呈する筋線維束がこの血管を横切るように走行していた。さらにTUBB3陽性の神経軸索もこの領域に入力されていることが明らかになった。興味深いことに、ペースメーカー細胞として知られるCD34陽性の子宮テロサイトもメッシュ状の筋線維束に沿って走行するのが観察され、TUBB3陽性の神経軸索終末がテロサイトに接している様子も観察された。 以上からこのメッシュ状構造は、長い管腔構造を呈するげっ歯類の子宮でありながら、局所の巧みな収縮を自律的に起こす起点になっている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度研究計画のうち、予定通り子宮筋層の解剖学的構造ならびに局所の組織学的解析は完了した。一方、生理学的解析の準備も概ね整ってきており、総じて順調と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
電気生理学的にペースメーカー細胞を刺激することで、メッシュ構造を起点に子宮収縮が誘導できるか検証を行う。マウスのtelocyteはCD34陽性であることから、蛍光標識抗CD34抗体を用いた生細胞ラベリングにより、子宮組織に対して直接的にtelocyteを電気刺激することで、収縮の起点を検証する。また、Caイメージングも並行して行う予定である。
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Causes of Carryover |
電気生理学的実験が本年度実施されなたっため、次年度で使用する計画である。また、遺伝子改変動物の作出および維持についても使用する計画である。
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