2020 Fiscal Year Research-status Report
卵巣癌におけるANGPTL2を標的とした新たな治療戦略の開発
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20K18223
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
竹下 優子 熊本大学, 病院, 診療助手 (40838645)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 卵巣癌 / 婦人科腫瘍 / ANGPTL2 / 癌腫 / インテグリン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまで婦人科癌での発現、役割についての研究がほぼ皆無であった血管新生因子であるアンジオポエチン様因子2(Angiopoietin like protein 2:ANGPTL2)が卵巣癌においてどのような役割を担っているかを明らかにすることを目的とした。 卵巣癌では腹膜播種という特徴的な転移様式をとることが知られているが、そのメカニズムは未だ解明されていない。本研究では、ヒト卵巣漿液性癌細胞株SKOV3細胞を用いてANGPTL2の過剰発現株を樹立し、SKOV3-ANGPTL2過剰発現株を用いたマウスへの移植実験により、SKOV3-野生型と比較してANGPTL2過剰発現株で有意に腹膜播種の数が減少し、生存期間の延長が認められるという結果を得た。このことから、卵巣癌においてはANGPTL2が腹膜播種の抑制に寄与している可能性を見出した。腹膜播種のメカニズムの中でも腹水中に遊離した癌細胞が腹膜中皮細胞へ接着する過程に着目し、ANGPTL2が卵巣癌細胞の接着能低下に寄与しているのではないかと推測した。 細胞接着、特に卵巣癌細胞と細胞外マトリックスとの結合は、腹膜播種における重要なステップの1つである。インテグリンは、フィブロネクチン、ラミニンなどの細胞外マトリックス成分の受容体であることが知られている。そこで、SKOV3-ANGPTL2過剰発現株およびSKOV3-野生型でのインテグリンの発現を調べたところ、ANGPTL2過剰発現株で有意にインテグリンα5β1、α6およびβ4の発現の減少が認められた。したがって、これらのインテグリン発現の減少によってANGPTL2過剰発現株の接着が阻害されている可能性があると示唆された。さらに、in-vitroでの細胞接着実験によって、ANGPTL2はラミニンへの癌細胞の接着を阻害することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初めに作成した細胞株を用いたin-vitro実験において、再現性が得られず、細胞株を再度作成したため。
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Strategy for Future Research Activity |
インテグリンは、細胞外マトリックスから抗アポトーシスシグナル伝達を惹起することによってアポトーシスを抑制する上で重要な役割を果たすることが知られている。SKOV3-ANGPTL2過剰発現株ではSKOV3-野生型と比較して、いくつかのインテグリンの表現が減少したことがわかった。このため、今後はがん細胞の細胞死を抑制する抗アポトーシス因子に着目し、腹膜播種抑制のさらなるメカニズムの解明を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症対応のため、研究計画通りに実施できなかったため。
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