2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K18253
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
村井 綾 岡山大学, 大学病院, 助教 (00780834)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 嗅覚障害 / 軸索ガイダンス因子 / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
嗅覚受容体MOR29AとMOR29Bに蛍光標識した遺伝子組み換えマウス(MOR29ABマウス)に対し、嗅細胞の軸索を物理的に切断(軸索切断)を行い嗅覚障害モデルマウスを作成した。以前の研究により軸索切断のような重度の嗅細胞の傷害は嗅細胞軸索の接続異常(投射異常)をきたすことがわかっている。投射異常のおきた嗅細胞軸索は時間経過とともに軸索伸長の距離を伸ばし、本来の投射部位に近づいていく。しかしながら投射異常が正常化することはなかった。そこで臨床的に効果の認められている嗅覚刺激療法を嗅覚障害モデルマウスに実施したところ、嗅上皮の回復を促進することがわかった(2021年度)。嗅覚刺激療法が嗅細胞の回復を促進するメカニズム解明のため、本年度は嗅覚刺激療法の嗅球への影響と嗅素による違いを検討した。嗅球の後外側に位置するMOR29B糸球体を5種の嗅素を用いた嗅覚刺激療法群と1種の嗅覚刺激療法群およびコントロールとして生理食塩水による嗅覚刺激療法の3群で解析をおこなった。嗅球上の位置は後方及び外側に2次元的に解析を行った。5種の嗅覚刺激療法群では前後軸および外側方向の伸長は生理食塩水群と比較して、有意な軸索伸長を認めた。それぞれの1種の嗅覚刺激療法群と生理食塩水群では有意差を認めず、今回の結果では嗅覚刺激療法は現在報告されているように複数種の嗅素を用いたほうが効果的であると考えられた。また軸索切断後時間経過により改善した軸索伸長と嗅覚刺激療法群の比較を行ったところ、有意差はみとめず、回復を促進することが時間的にも証明された。さらに今回前述のように前後軸とともに内外側軸の測定を行い、空間的な位置関係の回復の検討をおこなっているが、時間経過群と嗅覚刺激療法群ではp値0.0553と有意差はないものの嗅覚刺激療法群が空間的な糸球体地図の回復に役立っている傾向を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
嗅覚再生にあたり、嗅細胞の再生は重要である。嗅覚とレーニングにより嗅上皮の厚みが増すという結果が得られたが、投射異常の予防や回復には至っていない。前年度、Semaphorin3A阻害薬を使用し、嗅覚再生を阻害する物質を除去した実験を行ったが、投射異常を完全に予防することができなかった。嗅細胞ターンオーバー促進および炎症の緩和は投射異常の予防にはなかなか寄与しないことがわかってきた。そこで、まず嗅細胞の回復を促進する嗅覚刺激療法の嗅覚地図の回復の影響の検討をおこなっていたやや遅延している。また嗅細胞への後天的な軸索ガイダンス因子の発現を前提に成熟嗅細胞へのプラスミド導入をおこなっているが、骨の硬い成体マウスの頭部に電荷をかけることがelectroporation法の難易度を上げる要因となっており、条件設定に難渋している。またパンデミックや世界的状況の不安定からプラスミド作成が困難であり、やや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
軸索ガイダンス因子のelectroporation法の検討を行う前に成体マウスにおける成熟嗅細胞に後天的に遺伝子導入が可能か検討するため、蛍光標識をもちいて成体マウスに蛍光標識を組み込んだプラスミドを用いてelectroporation法を行っていく。本年度の結果により嗅覚刺激療法は2次元的な軸索伸長を促進していた。嗅覚刺激療法により神経成長因子の発現をみとめる報告もあり、胎生期の軸索ガイダンス因子補充だけではなく、嗅覚刺激療法によって得られる他のたんぱく質を強制的に発現させることも検討していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
物品費等が節約できたため、次年度使用が生じた。使用計画としては次年度実施予定の成体嗅細胞嗅細胞への後天的遺伝子導入の検討等に必要な費用等に充当する。
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