2021 Fiscal Year Research-status Report
難聴がうつ・認知機能に及ぼす影響と病態の解明 ー中枢制御による新規治療法の開発ー
Project/Area Number |
20K18263
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
栗岡 隆臣 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 耳鼻咽喉科学, 講師 (30842728)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 聴覚障害 / 神経可塑性 / シナプス / 髄鞘 |
Outline of Annual Research Achievements |
聴覚機能は加齢に伴って低下するため、超高齢化社会を迎えた本邦では、難聴が大きな社会問題となっているが、難聴が中枢神経に及ぼす影響は不明である。 本研究ではまず、①伝音難聴による中枢への入力低下が海馬の神経新生に及ぼす影響について検討する。マウス(C57BL/6、2ヶ月齢)の耳穴に印象材シリコン樹脂を2ヶ月間充填し、伝音難聴モデルを作成した。海馬の神経新生能の評価には、Doublecortin(DCN)、Ki-67の発現陽性細胞数の計測を用いた。伝音難聴マウスでは海馬におけるDCNおよびKi-67の発現が低下しており、海馬の神経新生能が低下することが示唆された。 続いて、②爆傷による鼓膜穿孔と内耳障害が蝸牛神経核に及ぼす影響について検討した。爆傷による鼓膜穿孔は全例で閉鎖を確認したが、鼓膜穿孔があった個体において内耳障害が軽度であることを明らかにした。また、蝸牛神経核の興奮性、抑制性シナプスマーカーの発現はいずれも低下しており、内耳障害の程度と中枢の変化は相関しないことが明らかとなった。 海馬は認知機能、記憶、学習機能と関連があることから、伝音難聴による中枢への情報入力低下により認知症などを発症する可能性が示唆された。また、難聴に伴う中枢変化の他に中枢機能そのものの低下についても考慮する必要がある。日常の臨床においても中枢機能への影響を考慮しながら、難聴に対する治療方針を決定することが重要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、伝音難聴による中枢への入力低下が海馬の神経新生に及ぼす影響について検討している。伝音難聴マウスでは海馬におけるDCNおよびKi-67の発現が低下しており、海馬の神経新生能が低下することが示唆され、計画通りに研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
難聴モデルに、抗炎症作用のある薬剤(IL-6阻害剤、ステロイド、ミノサイクリン)、神経栄養因子(BDNF)もしくは抗うつ薬(SSRI)を全身投与または鼓室内投与し、聴力に及ぼす影響と内耳・聴覚中枢の組織学的な評価をする。併せて、抑うつ・認知機能に関わる海馬の組織学的変化について解析し、聴力と抑うつ・認知機能及び中枢組織学的な治療効果について評価する。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症に伴う実験施設使用制限や実験機材の供給停止があったため。
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Research Products
(12 results)