2021 Fiscal Year Research-status Report
Molecular mechanisms of rhinovirus infection regarding aggravating factors in eosinophilic rhinosinusitis
Project/Area Number |
20K18264
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
大庭 亜由子 順天堂大学, 医学部, 非常勤助手 (90812975)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 好酸球性副鼻腔炎 / 鼻ポリープ / ライノウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、副鼻腔粘膜に多数の好酸球浸潤を伴い、難治性かつ再発性の鼻ポリープを伴う好酸球性副鼻腔炎が注目されている。好酸球性副鼻腔炎においては特徴的な好酸球性ムチンの鼻漏を繰り返すことが再発の徴候であり、粘液産生が病態に深く関わり合うことが推察される。しかしながら、好酸球性ムチンの産生の分子機序は未だに不明な点が多く、難治化因子となっている。 臨床的には慢性副鼻腔炎は上気道感染症を契機に増悪することが知られている。申請者らの研究室では、過去に好酸球性副鼻腔炎の増悪因子として上気道感染に続発する細菌感染を証明した。これらの事実は増悪因子としてウイルス感染が引き金となって細菌感染との増強作用を起因させる事を示唆している。多くの呼吸器系ウイルスの中で上気道感染に最も高頻度に関与するのはライノウイルスである。 好酸球性副鼻腔炎の増悪機序の解明の目的で、培養ヒト鼻上皮細胞と鼻腺細胞におけるライノウイルス感染の影響を分泌応答機構から検討した。①ライノウイルス感染による鼻上皮表面上皮からの炎症性サイトインやライノウイルス受容体のICAM-1の発現亢進、②好酸球性副鼻腔炎の培養鼻腺細胞からのMac5AC分子発現応答、③ウイルス感染に基づく粘液産生亢進の分子メカニズムを解明する。本研究によってライノウイルスが引き起こす鼻腺細胞からのムチン分泌亢進を惹起せしめる病態が解明され、好酸球性副鼻腔炎の増悪・再燃の分子メカニズムを世界に先駆けて発信することができる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
内視鏡下副鼻腔手術にて摘出したポリープをプロテアーゼにて一晩処理して上皮細胞のみ単離し、フィルター上に培養した。ヒト培養鼻上皮細胞をライノウイルス14型105TCID50/mlに60分間感染させて、純化培養した。感染の確認はRT-PCR法によりヒト培養鼻上皮細胞中のウイルスRNAの増加で確認した。更に培養液中のウイルスの増加で確認した。ライノウイルス感染によるヒト培養鼻上皮細胞の培養液の炎症性サイトカイン(IL-13,IL-17A,TSLP)をELISA法で測定した。ノーザンブロット法により培養鼻上皮細胞内ICAM-1合成の発現を確認した。エンドトキシン添加によるICAM-1合成の発現変化を検討した。 IL-13,IL-17A,TSLP刺激による鼻腺細胞のMac5AC遺伝子/蛋白の発現を定量的PCR法とウエスタンブロット法で測定した。IL-13,IL-17A,TSLPによるヒト培養鼻腺細胞に発現するMuc5AC遺伝子の核内転写因子NF-κBやERK/AP-1活性を測定した。フィルターに培養した細胞がconfluentになった後、Ussing chamberを用い短絡電流測定装置にてvoltage-clamp法でイオン電流の解析を行い、腺細胞上皮細胞の分泌能を調べた。ERK/AP-1阻害剤U0126の投与による短絡電流の変化を測定した。ヒト鼻上皮細胞と鼻腺細胞の純化培養、ライノウイルス感染による培養鼻上皮細胞のサイトカイン分泌測定、エンドトキシンによる上皮細胞のICAM-1の発現測定、炎症性サイトカインによる鼻腺細胞のムチン遺伝子発現の検討、炎症性サイトカインによる鼻腺細胞の核内転写因子NF-κBやERK/AP-1活性の測定、Ussing chamberを用いた短絡電流測定装置による鼻腺細胞の分泌能の計測が実施された。
|
Strategy for Future Research Activity |
サイトカインやICAM-1は好中球、リンパ球、好酸球などを活性化して副鼻腔の炎症に関与し、更にライノウイルスの反復感染の原因にもなる。ヒト培養鼻腺細胞の分泌機序の一端が解明され、鼻汁分泌の臨床症状を呈する疾患の病態解明に対して非常に意義のある研究となる。ヒト培養鼻腺細胞を用いての呼吸器ウイルス感染の研究は国内外においてはまだ施行されておらず、本研究の独創性を示している。申請者らはこれまでヒト培養鼻腺細胞を用いてマクロライド抗生剤によるアセチルコリンを介するCl-分泌の抑制とその細胞内伝達機構を解明してきた。以上の事より、好酸球性副鼻腔炎再燃時の鼻汁分泌を呈する疾患の病態解明が確信でき、好酸球性副鼻腔炎の増悪・再燃の分子メカニズムを世界に先駆けて発信することができる。本研究から、IL-13, IL-17A, TSLPなどの炎症性サイトカイン、鼻上皮細胞のICAM-1や鼻腺細胞のMuc5AC遺伝子の転写因子が新しい創薬のターゲット候補として注目される。鼻汁、鼻閉、後鼻漏、嗅覚障害などの鼻症状、頭痛、頬部痛などに悩み、苦しむ国内の数百万人の患者への大きな福音となり、国民生活の質的向上をもたらす極めて有意義な研究となる。
|
Causes of Carryover |
以下の実験を本年度に施行予定であったが、いまだ十分ではないため、次年度にこれらの実験に必要な使用額を計上した。 ①炎症性サイトカインによる鼻腺細胞のムチン遺伝子発現の検討 ②炎症性サイトカインによる鼻腺細胞の核内転写因子NF-κBやERK/AP-1活性の測定 ③Ussing chamberを用いた短絡電流測定装置による鼻腺細胞の分泌能の計測
|