2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K18286
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
土橋 奈々 九州大学, 大学病院, 医員 (20826333)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 老人性難聴 / 細胞老化 / 内耳障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、細胞老化の老人性難聴の病態への関与を明らかにすること、また、老化細胞の除去によって老人性難聴の予防や改善につながる治療法を開拓することを目的としている。まず、老化促進マウスSAMP8とそのコントロールであるSAMRマウスを用いて、それぞれの経時的な聴力の変化を評価し、ともに内耳における加齢による老化細胞の蓄積を確認し、老化関連遺伝子の検出をおこない、正常細胞から老化細胞へ移行したことを評価する計画である。 2021年度、まず聴力測定装置のABRの測定環境を整えた。その後、搬入した老化促進マウスとして知られるSAMP8、SAMP1マウスとそのコントロールであるSAMRマウスに対してABRにて聴力測定をおこなった。聴力はSAMP8において著明な低下を認め、SAMP1とSAMRマウスには有意な聴力差はなかった。SAMP8マウスでは半年時点で高度難聴を示したが、SAMRマウスでは中等度難聴にとどまり、生後1年でもその傾向が持続していた。 また老化促進マウスにおいて老化細胞の検出を行った。生後9か月の時点でSAMRマウスに対してsurface preparationと蝸牛の骨迷路の透明化技術を用いてSA-β gal染色を行ったが、らせん神経節と内有毛細胞、外有毛細胞でSA-β gal染色陽性を認めた。 老化に関連する遺伝子検出については現在条件の調整中である。老化細胞に選択的細胞死を誘導する活性をもつセノリティック薬を用いた聴力改善と老化細胞の除去についても現在条件の調整中である。また、老化細胞を薬剤投与により除去できる機能を得たトランスジェニックマウスであるP16-3MRマウスにおいても老化細胞除去と聴力との関連についてはSAMマウスでの実験が進んだ後を検討しており今後の着手課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の広がりにより実験自体の開始が大幅に遅れたが、2021年度には次第に実験環境が整ってきたことから、計画していた実験開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、老化促進マウスとそのコントロールのマウスにおいて、経時的に聴力に差が生じること、また加齢に従ってらせん神経節と有毛細胞に老化細胞の蓄積を確認できた。生後どの時点で老化細胞増加していくかがまだ分かっておらず、その時期の見極めが検討課題である。また老化に関連する遺伝子検出、セノリティック薬を用いた聴力改善と老化細胞の除去については条件の検討中であり、今後条件を変えて実験を最適化する。
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Causes of Carryover |
研究の遅延があるため期間延長の申請を行い、次年度に実験を継続する予定である。実験計画に大きな変更はない。
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