2022 Fiscal Year Research-status Report
HPV関連中咽頭癌におけるDNA損傷修復系と内因性免疫因子APOBEC3の発現
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20K18299
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
甲能 武幸 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (90573410)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | HPV / 頭頸部癌 / DNA損傷修復系 / APOBEC / 阻害実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
HPV陽性頭頸部癌に対し、DNA損傷修復系因子およびAPOBEC因子が新規治療の標的となりうるか、in vitroでの解析を行った。具体的には、様々なDNA損傷修復経路のうちDNA2本鎖損傷を修復するATM経路、1本鎖損傷や複製フォークの停止を修復するATR経路、DNA2本鎖架橋を修復するFA経路に着目し、HPV陽性頭頸部癌細胞株であるUPCI090細胞と、コントロールとしてHPV陰性頭頸部癌細胞株であるSCC9細胞、SCC25細胞を用いて阻害実験を行った。阻害にはKU55933(ATM 阻害剤)とVE822(ATR 阻害剤)を用いたが、FA経路とAPOBEC因子の特異的阻害薬は今のところ存在しないので、RNA干渉によりノックダウン細胞を作成し検討した。
その結果、HPV陽性頭頸部癌細胞株においては、シスプラチン単剤投与と比べ、DNA損傷修復経路阻害+シスプラチン投与で著明に抗腫瘍効果を認めた。なかでも、ATR阻害剤併用投与群で最も顕著に殺細胞効果を認めた。APOBEC3Bのノックダウン細胞におけるシスプラチンの抗腫瘍効果はWild typeと比較してわずかに増大していたが、統計学的な有意な差は認めず、APOBEC因子阻害での抗腫瘍効果の上乗せは軽度であった。
一方、HPV陰性頭頸部癌細胞株においてはDNA損傷修復経路阻害の抗腫瘍上乗せ効果は軽度であった。HPV増殖や腫瘍化への関与が示唆されるDNA損傷修復系因子の阻害はHPV陽性頭頸部癌においてより効果を発揮し、ATR阻害剤併用によって殺細胞性のシスプラチンを低用量で投与する新たな治療戦略への寄与が考察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
APOBECやFA経路の因子のノックダウン細胞の作製に難渋し、阻害実験の開始が予定よりも遅くなったため、計画から遅延が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
DNA損傷修復経路の阻害による抗腫瘍上乗せ効果に関する検討は、1種類のHPV陽性頭頸部癌細胞株でしか確認できておらず、他の細胞においても同様の結果が得られるか細胞種を増やして更なる解析を行う必要があると考えており、その反復実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画から遅延したため、論文化に遅れが生じてしまった。差額は英文校正や学会発表、消耗品の購入に使用する予定である。
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