2020 Fiscal Year Research-status Report
がん糖代謝能に基づいた頭頸部がん微小環境における免疫状態の解析
Project/Area Number |
20K18307
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
大橋 敏充 岐阜大学, 医学部附属病院, 併任講師 (80707860)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 頭頸部癌 / 腫瘍免疫 / がん代謝 / がん微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん組織では自身の糖代謝の改変することにより、がん微小環境の免疫抑制状態を誘導していることが徐々に明らかになってきている。本研究では、細胞外フラックスアナライザーを用いて、患者由来がん細胞の糖代謝能を、解糖系・ミトコンドリア呼吸にわけて、直接測定する。その結果から、糖代謝により4つのタイプ(糖代謝休止、解糖系亢進、ミトコンドリア呼吸亢進、糖代謝亢進)に分類し、それぞれにおける微小環境の免疫状態を解明することを目的としている。また、代謝酵素の発現等と対比することで、臨床応用可能な、糖代謝能の評価法の検討も行いたい。 現在、細胞外フラックスアナライザーで代謝解析を行った症例は15例程度である。まだ症例数が限られており、解析を行うには不十分である。そのため、まずは網羅的メタボローム解析を用いて、頭頸部癌組織における代謝特性を、正常咽頭組織と比較することで明確にすることとした。糖代謝に関しては、グルコースからピルビン酸までの経路の代謝物の多くは、癌組織で低値であったが、乳酸は高値であった。TCA回路では、前半のクエン酸は癌組織で低値であったが、後半のコハク酸は高値であった。アミノ酸代謝に関しては、Ala、Asn、Gly、Ile、Pro、Valでは癌組織で高値であり、総アミノ酸量も高値であった。DNAやヒストンのメチル化反応におけるメチル基供与体となるSアデノシルメチオニンや、がん代謝物として知られる2ヒドロキシグルタル酸は、癌組織で高値であった。頭頸部癌組織は正常組織とは、組織内に蓄積した代謝物が異なり、それらの代謝状態の違いを反映していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細胞外フラックスアナライザーで糖代謝解析を行った症例は、まだ15例程度である。予定していた4つのタイプに分類するには、全く数が足りていない。数は少ないが、臨床応用可能ながん糖代謝機能の評価法として、FDG-PET/CTと細胞外フラックスアナライザーの結果を比較してみたが、有意な相関は認めていない状況にある。今後、さらに症例数を積み重ねることで期待するような結果が得られる可能性があると考えているので、さらに症例が増えてくるのを待っている状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究対象を、当院にて前治療なしに切除術を行った頭頸部癌に限定しており、症例の蓄積にはどうしても時間がかかる。引き続き症例を増やしていくように努力はしているが、限界はある。 その間は、2つのことを行う予定である。一つは、網羅的メタボローム解析によって明らかになった頭頸部癌組織における代謝特性に関して、さらに詳細な解析を行いたい。Warburg効果を反映し、頭頸部癌組織では解糖系の代謝物は高値になると予想していたが、実際には全く逆な結果が得られた。そのこと理由を探るためにも、追加の実験が必要と考えられる。具体的には、解糖系関連因子やミトコンドリア代謝関連因子の発現を、正常咽頭組織と比較する予定である。二つ目は、FDG-PET/CTががん糖代謝機能を評価する有能なツールであることを確認するための研究を行いたい。今までのライブラリーを用いて、PET/CTパラメーターと解糖系関連因子やミトコンドリア代謝関連因子の発現と評価することを考えている。
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Causes of Carryover |
研究の進行がやや遅れていることが原因と考えます。 症例が増えてこれば、予定通りに使用する予定である。
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