2023 Fiscal Year Research-status Report
がん糖代謝能に基づいた頭頸部がん微小環境における免疫状態の解析
Project/Area Number |
20K18307
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
大橋 敏充 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (80707860)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 頭頸部癌 / 腫瘍免疫 / がん代謝 / がん微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん組織では自身のエネルギー代謝の改変することが、免疫抑制を誘導など様々な経路を介してがんの進展に関与していることが明らかになってきている。本研究では、細胞外フラックスアナライザーを用いて、患者由来がん細胞の糖代謝能を、解糖系・ミトコンドリア呼吸にわけて、直接測定する。その結果から、糖代謝のタイプに分類し、それぞれにおける微小環境の免疫状態を解明することを目的としている。その結果、解糖系が亢進した症例はミトコンドリア呼吸も同様に亢進、解糖系が低下した症例はミトコンドリア呼吸も同様に低下いることがわかってきた。当初想定していた糖代謝に基づいた4つのタイプ(糖代謝休止、解糖系亢進、ミトコンドリア呼吸亢進、糖代謝亢進)に分類することは実際には困難であることがわかった。 また並行して網羅的メタボローム解析を行ってきた。この方法は、組織中の代謝物質の種類や濃度を網羅的に測定・分析を行う事が可能である。網羅的メタボローム解析は、頭頸部扁平上皮癌23例、正常咽頭組織6例を用いて比較検討をおこなった。さらに、同じ症例を用いて、リアルタイムPCRによる代謝酵素などの遺伝子発現測定も追加し、頭頸部がん組織での代謝状態を多方面から解析を行った。その結果は、頭頸部癌組織では正常咽頭組織と全く異なる代謝状態であることが明らかになり、それらはOral Diseasesにて論文発表をおこなった。 研究が進むことで、代謝タイプにより最適な治療法が検討されるようになり、また代謝を改変することで治療効果を高めることに繋がると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
頭頸部癌の代謝状態の評価として、網羅的メタボローム解析、代謝酵素などの遺伝子発現解析をおこなった。頭頸部扁平上皮癌組織では様々なエネルギー回路(解糖、五リン酸経路、トリカルボン酸サイクル、グルタミン代謝)が亢進していることが明らかになった。また、がん代謝物として知られる乳酸、コハク酸、グルタチオン、2-ヒドロキシグルタル酸、S-アデノシルメチオニンなどが増加・蓄積していることが明らかになった。これらの結果は、Oral diseasesに掲載された(Metabolic profiling analysis of head and neck squamous cell carcinoma. http://doi.org/ 10.1111/odi.14432)。 代謝によるタイプ分類はできないかわりに、細胞外フラックスアナライザーの結果と糖取り込みを評価しているFDG-PET/CT、組織中の代謝酵素などの遺伝子発現解析との関連性を評価することで、がん組織の代謝機能をFDG-PET/CTがどれくらい反映しているかを調べてみた。しかしながら、FDG-PET/CTと代謝酵素などの遺伝子発現には、全く関連性を示す結果は得られなかった。 がん組織における代謝状態に関する解析は順調に進んでいるが、一方で免疫状態における評価が全くできてない。また、2023年6月で岐阜大学を退職し、現在は一般病院で臨床医を行っている。空いた時間をみつけて研究を継続している。そのため「遅れている」と判断し、研究期間を延長した。
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Strategy for Future Research Activity |
がん組織の代謝に関する解析は順調に進んでいる。しかしながら、当初の予想とは異なる結果も出てきていて、どのように対応するか検討中である。 臨床応用の手段として、細胞外フラックスアナライザー、網羅的メタボローム解析の結果とFDG-PET/CTとの関連性を検討しようと考えています。 また現在のところ、免疫状態に関する解析が全くできていないので、組織中の免疫細胞の解析を今後行う予定です。 臨床業務が忙しいが、時間をみつけて研究を行っていきたい。
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Causes of Carryover |
研究施設を退職し、現在は招へい教員として研究に携わっている。研究が進んでいないために次年度使用額が生じた。 臨床業務が忙しいが、時間をみつけて研究を行っていきたい。研究をまとめて発表する予定なので、学会参加費、論文の英語校正や投稿費用に充てる予定である。
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[Presentation] Immune-modified Glasgow Prognostic Scoreを用いたNivolumab治療効果予測2023
Author(s)
大橋 敏充, 寺澤 耕祐, 柴田 博史, 滝脇 正人, 若岡 敬紀, 棚橋 重聡, 高橋 洋城, 山田 南星, 久世 文也, 大西 将美, 白戸 弘道, 水田 啓介, 小川 武則
Organizer
第124回日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 総会・学術講演会