2023 Fiscal Year Annual Research Report
Streptozotocinが有する聴覚障害・前庭障害の横断的な検討
Project/Area Number |
20K18309
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
杉本 賢文 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (30759668)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Streptozotocin / 聴力 / 前庭機能 / ABR / DPOAE / 糖尿病 / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
Streptozotocin(STZ)は糖尿病研究のために必要となる糖尿病モデル動物を作成する際に最も頻用されている薬剤である。糖尿病は難聴や平衡障害などの内耳障害を合併することがわかり、STZを用いた糖尿病モデル動物を利用した研究が行われてきたが、STZ自体が内耳障害を引き起こす可能性も考えられていた。そこで、STZによる内耳障害の可能性を評価するため本検討を行った。C57BL/6Jマウスの右鼓室内へSTZ、Gentamicin (GM)、生理食塩水を投与し、4週間後に聴性脳幹反応(ABR)、歪成分耳音響放射(DPOAE)、平衡機能評価を行った。4週間後に鼓膜穿孔残存は認めず、体重、血糖値共に各群間の有意差は認めなかった。ABRでは生理食塩水投与群と比較し、STZ投与群、GM投与群共に4kHzから32kHzのすべての周波数にて有意な閾値上昇を認めた。DPOAEでは生理食塩水投与群と比較し、STZ投与群では5.6kHzから22kHz、GM投与群では5.6kHzから16kHzの周波数にて有意な反応悪化を認めた。平衡機能評価ではGM投与群にて平衡障害所見(右側への傾き歩行、尻尾から逆さに吊るした際や水泳時の異常回転運動)を認めたが、STZ群や生理食塩水群では平衡障害を示唆する所見は認めなかった。STZ鼓室内投与により聴力障害が誘発されたとの報告例は無く、本研究により初めて基礎データが得られた。聴力障害所見の中でも、主に蝸牛の外有毛細胞活性を反映するDPOAEの悪化を認めるため、STZ鼓室内投与により蝸牛障害が生じることが示唆された。また、STZ鼓室内投与により前庭機能障害は誘発されないことも示唆された。今後は、例数を増やすと共に、他の系統のマウスでの測定も実施して、慎重に検証を重ねる予定である。
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