2020 Fiscal Year Research-status Report
FOXO3/TGF-βシグナルを介した難聴の新規病態メカニズム解明と治療への応用
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20K18319
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
角木 拓也 札幌医科大学, 医学部, 助教 (70706548)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 内耳有毛細胞 / 平面内細胞極性 / 繊毛形成 / Foxo3 / TGF-β |
Outline of Annual Research Achievements |
内耳有毛細胞は自己再生能がなく、その障害は不可逆的であるため、内耳性難聴における再生医療が待ち望まれている。最近、細胞極性、代謝に関与するとされるフォークヘッド型転写因子のFoxo3の内耳性難聴への関与が注目されている。今回我々は、温度感受性マウス内耳有毛前駆細胞を用いて、Foxo3が関係するTGF-βシグナル伝達経路の細胞極性、繊毛形成への関与をみるとともに、そのメカニズムの解析を試みた。まず、温度感受性SV40-large T antigen遺伝子導入マウスの胎児より分離培養し不死化させた内耳有毛前駆細胞を用い、TGF-β阻害剤処置による繊毛形成の変化を免疫染色、SEMを用いて解析した。 結果、細胞極性制御因子であるPAR-3の細胞膜への移行を認めた。また、SEM、免疫染色による解析でTGF-β阻害剤処置により繊毛形成の亢進を認め、それら繊毛がF-actin陽性であることが確認された。さらに、細胞外細胞外フラックスアナライザーを用いてミトコンドリア代謝の変化を解析したところ、TGF-β阻害剤処置により用量依存性にOCRの亢進を認めた。このことからTGF-β阻害剤処置によりミトコンドリア代謝の亢進が示唆された。そして、wound healing assayにより細胞遊走能の変化を解析したところ、TGF-β阻害剤処置による創閉鎖率の低下を認めた。以上のことより内耳有毛細胞においてTGF-βシグナル伝達経路を介した繊毛形成、平面内細胞極性の関与が示唆された。本研究に先行して施行したDNA Microarrayの結果、TGF-β阻害剤処置によりSmadの変化を認めており、今後、TGF-β/Smad経路の下流に位置する制御因子を検討し、さらなる難聴の病態メカニズムの解明を試みる方針である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年、2年度に実施する実験においては、ほぼ終了し有意義な結果を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
TGF-β/Smad経路の下流に位置する制御因子を検討し、さらなる難聴の病態メカニズムの解明を検討する。
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Causes of Carryover |
(理由) 消耗品の使用が予定より少額であったため。また、COVID-19感染流行のため、学会の現地参加をせず、発表した学会もあり、旅費も少額であった。 (使用計画) 消耗品費(抗体、培養器具、蛋白およびRNA解析試薬、形態観察用試薬、機能解析試薬など):140万円、旅費(国内学会):20万円、その他(材料費):5万円
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