2021 Fiscal Year Research-status Report
Upregulation of barrier function in human sinonasal mucosa
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20K18323
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
中村 真浩 順天堂大学, 医学部, 助教 (20646236)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 鼻副鼻腔 / アレルギー性鼻炎 / フィラグリン / 上皮電気抵抗値 |
Outline of Annual Research Achievements |
アトピー性皮膚炎や気管支喘息、アレルギー性鼻炎で知られるatopic diseaseの有病率が先進国を中心に現在明らかな増加の一途を辿っており、アレルゲンやアレルギー惹起物質を上皮レベルで防御することがアレルギー疾患の予防および進行の防止の上で求められている。本研究ではバリア機能関連タンパクであるフィラグリンの制御因子を探索し、バリア機能増強による新規治療を開発することを目的とした。既に我々の先行研究で、鼻粘膜のインピーダンスの測定によってin vivoでバリア機能をモニタリングする方法を報告している。鼻粘膜の電気的透過性についてアレルギー性鼻炎患者を対象に、Tissue Conductance Meter AS-TC100 (Asahi Biomed) を用いて鼻粘膜インピーダンスを測定し、印可電圧25mVおよび周波数320Hzで下鼻甲介前端の粘膜表面に電極を接触させることにより、一定電圧域から粘膜を介して検出電極に電流を流してインピーダンスを測定する方法で、鼻粘膜レベルでの炎症のグレードを評価し、得られた知見を学会で発表してきた。 また、フィラグリンの局在を正常鼻副鼻腔粘膜の免疫染色によって検討し、下鼻甲介粘膜、蝶形骨洞粘膜の線毛上皮および基底細胞に同定した。また、一方でバリア機能破綻を来していると考えられている鼻茸組織検体での検討では上皮にフィラグリンは認めなかったことを報告した。さらに、MAC5ACとフィラグリンの二重染色を行い、鼻副鼻腔粘膜上皮においてgoblet細胞でのフィラグリン陰性反応も確認している。 さらに正常ヒト鼻粘膜上皮細胞を培養し、回収した細胞をReal Time PCRを用いて測定し、鼻粘膜上皮におけるフィラグリンの発現を確認した。さらにタンパクレベルにおいてもフィラグリンの発現について培養正常ヒト鼻粘膜上皮細胞を用いて証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フィラグリン制御因子の探索のため正常ヒト鼻粘膜上皮培養細胞を用いて、複数種のサイトカインおよび抗菌ペプチドの刺激を行い時間依存的ならびに容量依存的な変化を無刺激のものと比較したところ、IL-22およびIL-25による刺激によってフィラグリン発現の増強がReal Time PCRにより認められた。一方でIL-17Aによる刺激ではフィラグリンの発現が減弱していた。この結果をもとに、サイトカイン刺激によるフィラグリンの制御とこれまで我々が報告したS100A7による鼻粘膜上皮細胞の刺激によるフィラグリンのup regulationの複合的な影響を検討するため、共刺激によるフィラグリンの発現の変化をReal Time PCRで検討した。結果はIL-17Aについては単独刺激で鼻粘膜上皮におけるフィラグリン発現のdown regulationを認める一方で、S100A7との共刺激においては増強する結果を得た。その他のサイトカインの検討については有意な結果は得られなかった。 また、ウイルス感染による鼻粘膜上皮のバリア機能障害を想定したフィラグリンの変化と、その際の抗菌ペプチドによるフィラグリン増強効果の評価を行うためにpoly:ICの刺激を培養した鼻粘膜上皮細胞の上清に添加し、S100A7刺激の有無で、産生される上皮障害タンパクを検討した。しかし、TSLPなどの産生において有意な差異は認められなかった。 一方、バリア機能減弱に関連性が高いと考えられるアレルギー性炎症を客観的に評価するため、鼻副鼻腔手術にて摘出した下鼻甲介および鼻茸組織から免疫細胞をソーティングで分取して網羅的な遺伝子発現の検討を行っていた。手術検体からの細胞の分離法および主要な免疫細胞の表面マーカーを用いた分取法、ソート細胞からのRNA抽出法、RNAのクォリティの確認・発現解析手法、網羅的遺伝子発現解析を確立してきたが、新型コロナウイルスの流行により研究室への実臨床における鼻粘膜検体の持ち込みがハイリスクとされ、一旦凍結となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitroでの研究については引き続き正常ヒト鼻粘膜上皮細胞よる検討を行う。具体的にはフィラグリン発現とバリア機能の関連を評価するために、バリア機能関連タンパクの増強因子および、ウイルス感染ならびにアレルギー性炎症などをmimicした刺激を行なった上での上皮バリア機能の検討を予定している。上皮電気抵抗値(TER; trans epithelial electrical resistance)の測定もバリア機能増強因子の評価に必要である。 またin vivoでの鼻粘膜バリア機能の評価についても並行して、Tissue Conductance Meter AS-TC100 (日本アッシュ) を用いて粘膜インピーダンスの測定を行う。アレルギー性鼻炎の患者の下鼻甲介前端の鼻粘膜における電気抵抗の計測を治療介入前後で行い、その変化と症状の相関を検証する。また、近年鼻副鼻腔粘膜のバリア機能障害として注目されている好酸球性副鼻腔炎症例についても、その炎症の病勢と粘膜バリアの評価をin vivoで行うことを計画している。その場合には炎症の主たる場と考えられている篩骨洞粘膜の状態を反映し、かつ測定の簡便さを考慮し、鉤状突起もしくは篩骨胞での測定を計画している。 新型コロナウイルスの流行が落ち着いたと判断された場合には、摘出検体による研究も再開したいと考えている。具体的には測定部位を摘出してフィラグリンを免疫染色およびReal time PCR、ウエスタンブロットによって評価して粘膜インピーダンスとの関連を評価する。また、これらを上皮の炎症があると考えられる疾患毎に検討することを目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス流行による手術中止措置によりわずかに研究の遅れが生じた為、一部消耗品費の購入を次年度に見送った。短期的に研究の進捗状況を確認し、更に研究を遂行すべく実験に必要な消耗品を購入する。得られた研究成果を積極的に発表するため、旅費にも使用する。
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Research Products
(7 results)