2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K18325
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
宇田川 友克 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (60328292)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 難治性中耳炎 / 細胞シート / 繊毛細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者が所属する細胞シートグループは、術後再発が長年の課題であった真珠腫性中耳炎に対して術中創部(乳突腔)に我々が開発した鼻腔粘膜細胞シートの自家移植を行い、再発率を下げることに成功した。しかしながら、難治性中耳炎の一つである癒着性中耳炎症例では創部(鼓室)に細胞シート移植をしても、術後再発するケースが少なくない。この原因として、我々が開発した細胞シートは繊毛が生えていないため、鼓室の正常粘膜(繊毛が豊富)と同等の役割ができていない事が考えられる。本研究では無繊毛細胞シートの分子発現パターンを詳細に観察した上で、温度応答性培養皿を用いて容易に移植可能な鼻腔粘膜由来の繊毛細胞シートを開発して、 繊毛機能不全に陥った鼓室の難治性中耳炎に対する新規治療法モデルの確立を目指す。既存の鼻腔粘膜由来の細胞シートに繊毛が生えない原因としては、温度応答性培養皿や培養液など、何らかの培養環境が細胞の多分化能を一部抑制して、ヒト鼻腔上皮に本来存在する繊毛上皮細胞に分化する事を妨げている事が考えられる。自己複製(増殖)能と様々な細胞に分化する能力(多分化能)を有する上皮の細胞として、マーカーY陽性細胞が広く知られている。ヒト鼻腔粘膜由来の無繊毛細胞シートにおいて、マーカーY陽性細胞は基底層に存在する。この細胞マーカーYと、繊毛細胞の分化に必要な事が知られている転写因子Xの発現を観察したところ、期待通りに無繊毛細胞シートのマーカーY陽性基底細胞は転写因子Xを発現していた。この結果は無繊毛細胞シートのマーカーY陽性細胞は繊毛細胞に分化する能力があることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
無繊毛細胞シートのマーカーY陽性基底細胞は繊毛細胞に分化できる可能性を示す知見を得られたから。
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Strategy for Future Research Activity |
繊毛発生に必要な候補分子(成長因子やシグナル伝達関連物質、例えば内耳支持細胞を有毛細胞に分化させるNotch阻害剤等)を培養液に添加して、繊毛細胞(Acetylated tubulin陽性細胞)を有する細胞シートが温度応答性培養皿上で発生するかを観察する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う緊急事態宣言のため、実験や学会参加等、計画していた一部の予定が中止となったため。
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