2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K18325
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
宇田川 友克 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (60328292)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 難治性中耳炎 / 細胞シート / 繊毛細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
難治性中耳炎の一つである癒着性中耳炎の根治手術中に従来の鼻腔粘膜由来無繊毛細胞シートを創部(鼓室)に移植しても術後再発するケースが少なくなく、癒着性中耳炎症例の術後再発率を改善させることが本研究の最終目的である。この目的を達成するために、温度応答性培養「基材」を用いて容易に移植可能な鼻腔粘膜由来繊毛細胞シートの開発を目指している。
昨年、研究協力者である葛西らは作製した無繊毛細胞シートにトリプシン処理によって細胞を回収した後に、気道上皮の分化誘導条件であるPneumaCult TM -Air-Liquid Interface培地(P-ALM) に再培養し、繊毛細胞・杯細胞への分化能を有することを報告した(Kasai et al., FASEB Bioadv. 2022)。この方法に準じて、今年度は、鼻副鼻腔疾患を有する患者の手術検体(鼻粘膜)から、一度無繊毛細胞シートを作製しない培養方法を考案し、より短期的に繊毛細胞シートを作製する条件を探索した。そして、この創造物の特性を観察するため、鼻粘膜特異的に発現する遺伝子量やマーカータンパク等の様々な分子の発現解析を行った。その結果、手術検体由来の培養細胞から運動性のある繊毛細胞がより多く観察された。この培養細胞を免疫染色により解析したところ、杯細胞マーカーおよび、鼻粘膜の幹細胞と考えられている基底細胞の特異的マーカーの発現が見られた。さらに、繊毛細胞の発生に特異的な役割を演じていることが知られているAシグナルの伝達カスケードで重要な役割を演じている分子Zを筆頭に発現の時期や局在、量等を調査する方法を検証した。結果として、本繊毛細胞シートは遺伝子Z(Z receptorをコード)の発現量が顕著に高かった。また、発現局在解析を行い、Z receptorは既知の鼻粘膜細胞マーカー群と共発現していることを明らかにした。
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