2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K18327
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
佐野 塁 愛知医科大学, 愛知医科大学, 研究員 (50813846)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 甲状腺癌 / 制御性T細胞 / 免疫抑制環境 / 免疫チェックポイント分子 / CD8陽性リンパ球 / CD4陽性リンパ球 / PD-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度までに手術標本から得た腫瘍巣及び別に採取した末梢血に対してフローサイトメトリーの実験が実施完了した症例は合計26例です。これまでに分かったことの一つに甲状腺腫瘍病巣における免疫細胞には疾患ごとに違いがあるというのものです。また制御性T細胞やCD4陽性リンパ球やCD8陽性リンパ球上の免疫チェックポイント分子の発現についての検討の結果ではいくつかのものが末梢血と腫瘍病巣での発現に新たな発見がありました。今後は免疫チェックポイント分子の発現とと免疫細胞との関連性に関する解析を進めつつ中で何がより重要な働きを持つのかを解明します。また、甲状腺腫瘍へのリンパ球浸潤を免疫染色を用いて解析を進めています。 以上の結果を基にして免疫抑制環境が形成されることと甲状腺癌病巣の増生の関連性を検討しています。その結果として甲状腺組織における悪性腫瘍形成に免疫抑制環境が寄与しているかどうかについて一定の見解を提示ができると期待が持てる状況です。 各国において悪性腫瘍における微小免疫環境の解析が進んでおりますが甲状腺癌につては未だ知見に乏し状況です。悪性腫瘍病変に浸潤した免疫細胞の種類と役割を特定解析しそれらと免疫チェックポイント分子発現の関連性の解析は極めて重要な研究です。甲状腺癌においてもこれらの研究を進めその全貌を明らかにすることは重要です。甲状腺癌に対する免疫治療の開発を進めるにあたっては以上に述べたような基礎研究が不可欠です。本研究はその中でも確個たる基盤を築くものになります。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題はやや遅れております。当初の計画に即して症例数は確保しております。確保した症例に対して手術標本を採取し実験完了まで至ったものは26例であります。同時にこれまでに得られた実験結果を順次解析しております。遅れが生じた理由ですがやはり新型コロナ感染症の全国的な蔓延です。これにより実験室への入室制限が必要となりその結果として実験が遅れたことが大きな理由です。そのような状況ではありますが時間と状況が許す限り全力で実験を行った結果一定の実験結果が得られました。現在の実験結果からでも十分に成果を生み出せると考えております。 現在これまでの結果をまとめて学会発表及び論文作成に取り組んでおります。研究計画での目標症例数は42例でしたが現時点で確保できたものは40症例です。そのうち実験結果が得られている26例から解析したところ計画当初の推測通り、疾患が違えば甲状腺腫瘍病巣における免疫細胞の種類と割合に違いがあると言えるデータを示しております。免疫細胞の中でも免疫抑制に働くものと免疫刺激に働くものに分けて解析しております。免疫チェックポイント分子においてもは免疫を促進するものや抑制するもの、免疫細胞の活動を活性化するものや抑制するものがありそれらが複雑に絡み合って腫瘍巣における免疫環境を作り出していると考えています。これまでの研究結果からは悪性腫瘍においては微小免疫環境に変化があることが示されています。上記の通り研究予定と比較してやや遅れが生じておりますが研究計画を十分遂行できており今後はさらにこれまでの実験結果を解析しその成果を発表することで計画目標に到達すると考えております。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の目標数を目指し今後さらに症例数を追加します。それと同時に実験結果が得れらた症例のデータをまとめて全体として解析を行います。まずは現在すでにデータ作成が進んでいるフローサイトメトリの実験結果の解析を先行して行います。その結果は学会及び論文で発表します。甲状腺癌における免疫抑制環境を解明し甲状腺癌に対する免疫療法を確立することが本研究課題の最終目標です。そのためには得られたデータから順次解析を実施し甲状腺癌における免疫環境の解明に少しでも貢献できることが大切だと考えます。 これまでの結果からは甲状腺悪性腫瘍患者では甲状腺腫瘍病変において微小免疫環境に変化が起こっていることが示されています。免疫抑制状態となる仕組みや重要分子の解明が今後の課題となります。 研究推進方策として今後は免疫抑制状態に影響を与える免疫細胞の機能を解析します。免疫細胞上に発現する免疫チェックポイント分子に関する実験データを解析してどの分子が細胞の働きを抑制しまた反対にどの分子が細胞の働きを活性化しているのかを解明します。また、制御性T細胞、CD8陽性リンパ球やCD4陽性リンパ球上の免疫チェックポイント分子の発現を解析することでこれらの細胞の活性状態を解明します。その解析を基にして腫瘍巣における免疫環境を促進する分子や抑制する分子を解明します。次にこれまでの結果から甲状腺癌病巣にはリンパ球浸潤の割合に変化が起きていることが分かっています。他のリンパ球と比較してCD8陽性リンパ球は腫瘍免疫においては重要な役割を担います。このような細胞が甲状腺病変に浸潤するためには何が関与しているのか、病巣内と病巣外での免疫細胞の浸潤状況を比較し解析を行います。その結果を基盤として甲状腺癌病巣へ免疫細胞を働きかける手段を導き出し最終的には免疫による治療を開発します。
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Causes of Carryover |
前年度までに必要経費の削減に成功したことが大きな理由と考えます。新型コロナウィルス感染症の蔓延により学会がオンライン形式での実施となることが多く旅費が削減できたことが貢献しています。 当初の計画通りに症例数を確保できておりますが新型コロナウィルス感染症蔓延の影響で長期間に渡り実験室の使用が制限されたことが影響し実験が滞りがちとなったため実験に要した経費が少なかったことも一因かもしれません。もちろん実験に必要な物品については極力無駄の無いように効率的に実施するようにしています。以上の理由から 経費が削減されたと考えます。 また、事前に十分に準備を行い手順のシミュレーションを行ってから実験を行いことにより失敗をできる限り最小限に抑えられたことも必要経費の削減に寄与していると考えます。次年度使用額の使用計画では実験の継続及び、これまでに得られた実験結果の解析及び学会や論文作成費を計上しております。 今年度は本研究の成果を挙げるべく次年度使用額分を最大限有効に使用する所存です。研究が進展し免疫チェックポイント分子の解析が明らかとなった場合は追加実験を実施することも考えられます。そこでの必要経費にも使用させて頂きます。国際学会での海外発表の際にも必要経費として使用させて頂きます。
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