2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K18349
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
今永 直也 琉球大学, 病院, 助教 (50866134)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | anterior segment OCT / CSC / pachychoroid / pachychoroid spectrum / choroidal thickness / scleral thickness / swept source OCT / vortex vein |
Outline of Annual Research Achievements |
脈絡膜は眼血流の80%以上を担う組織であり、近年の眼底イメージング技術の進歩により、断層像の取得が可能となった。その恩恵を受けて登場したパキコロイドという概念は、脈絡膜肥厚や脈絡膜大血管拡張などの特徴を有する脈絡膜所見の概念であり、中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)や加齢黄斑変性(AMD)の一群との関連が示唆されている。しかしながら、何故、どのようなメカニズムでパキコロイドが生じるかという点は明らかにされていない。申請者らは強膜の状態が渦静脈の眼外への排出に関連しているという仮説を立て、前眼部光干渉断層計(OCT)を用いることで、パキコロイド関連疾患の一つであるCSC眼では正常コントロールよりも有意に強膜が肥厚していることを見出した(Imanaga N, et al. Ophthalmol Retina. 2021)。 本研究の目的は、pachychoroid(脈絡膜異常)の原因として強膜に着目、解剖学的な強膜構造の変化が病態に関与していることを明らかにし、病態に即した最適治療の開発を行うことである。前述のとおり、我々は前眼部光干渉断層計を用いて、今まで描出困難であった深部強膜を描出できる手法を確立、pachychoroid関連疾患(PSD)の一つである中心性漿液性脈絡網膜症では正常者に比較して強膜厚が厚いことを示した。その他のPSD症例も同様に検討を行い、PSDに対する強膜の関与を明らかにする。また、本研究では広角蛍光眼底造影画像を撮影することにより脈絡膜血管の眼外への排出部である渦静脈膨大部を評価、PSD症例と正常者との差異について検討していく。PSDにおいて強膜構造や鬱滞した渦静脈の関与が示されれば、強膜をターゲットとした病態に即した治療法開発が可能となり、PSDの予防、治療が大きく変革する可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は非介入、非ブラインドにて実施している。目標症例数は中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)眼200眼、正常眼200眼、さらに加齢黄斑変性(AMD)眼200眼を予定している。対象眼に対し、屈折度数、眼軸長に加え、トーメー社製のCASIA2を使い、強膜岬から後極側に6mm後方部位での強膜断層像を取得する。強膜厚を上方、耳側、下方、鼻側で測定した後、以下の臨床因子との相関を検討する。 ①高深達スウェプトソース光干渉断層撮影(OCT)を用いた黄斑部脈絡膜厚および内部構造、②en-face OCTを用いた脈絡膜血管のい対称性、③超広角OCTを用いた脈絡膜膨大部形状、④レーザースペックルフローグラフィーを用いた脈絡膜循環量的パラメーター。 ③に関して補足すると、キヤノン社製の超広角OCTが今年度より当科で使用可能となり、従来用いていた広角眼底撮影と比較して、形態解析の精度が飛躍的に向上した。 進歩状況であるが、現在CSC眼150眼、正常眼50眼、AMD眼150眼のデータ集積が完了し、その後も経過観察を行い継時的な脈絡膜、強膜構造の変化をデータとして集積中である。また、超広角OCTソフトウェアのアップデートを行うことにより、画像解析の精度も徐々に向上させるべく各機器メーカーと定期的にミーティングを行っている。 現在までにCSC眼においてSpaideらが報告した(Spaide RF, Ryan EH, Jr. Am J Ophthalmol. 2015)、脈絡膜外層の滲出液と推定されているLoculation of Fluidが強膜厚に相関がみられること、CSC眼において脈絡膜外層の管腔構造の拡張と強膜厚が関連していることを既に明らかにした。また、ステロイド関連CSC眼においては特発性CSC眼に比べて強膜肥厚の影響がより少ない可能性を見出した。その他のテーマにおいても集積および解析を進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の当初の研究方法として、pachychoroid関連疾患(PSD)眼や滲出性加齢黄斑変性(AMD)眼、正常眼における強膜構造や強膜を貫通する渦静脈をOCTにて描出すること、 が目標の1つであった。しかし、現状のOCTの深達度及び撮影方法では強膜構造や強膜を貫通する渦静脈の描出には限界があり、特に前眼部OCTを用いて強膜を貫通する渦静脈を描出するのは現在の撮影方法では困難であった。また、渦静脈フローの描出においても、現状の広角蛍光眼底造影、レーザースペックルフローグラフィやOCTアンギオグラフィなどの網脈絡膜血流を評価する機器では眼球黄斑部のフロー描出に留まっている。このためOCTのソフトウェアのアップデートや撮影方法や画像解析方法を見直し、引き続き前眼部OCT及び広角光干渉断層撮影(OCT)スキャンを用いて渦静脈の精細な描出や血流解析を目指す。 脈絡膜構造の解析においては鹿児島大学医学部との共同研究により、脈絡膜を管腔、間質構造に二階調化することにより、強膜厚と脈絡膜構造の関連性を見出した。今後も画像解析ソフトウェアを用いて脈絡膜構造解析を進める予定である。 上記のとおりソフトウェアや画像解析ソフトのアップデート等を駆使して、今後もPSD眼、AMD眼、正常眼のデータを取得、解析、定量化し強膜厚、強膜構造がPSDに特徴的な脈絡膜構造、脈絡膜血流にどのような影響を与えるかを引き続き解析する。加えて解析されたデータから強膜構造や渦静脈による既存のPSDに対する加療に対する影響を検討し、強膜構造を元により適正な加療を目指す。
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Causes of Carryover |
現状では高深達スウェプトソース光干渉断層計(OCT)による脈絡膜の撮影は可能であるが、脈絡膜に対する画像解析においては脈絡膜の詳細な構造や血管分布、血管構造や血管フ ローを詳細に描出するのは既存のソフトでは不十分である。今後脈絡膜構造をより詳細に描出できるソフトの開発を行う必要がある。前眼部(OCT)(CASIA2)を用いた強膜構造の画像解析はさらに遅れており、我々は超高解像度前眼部OCTを用いて強膜厚を測定する手法を開発したが、強膜構造や剛性、強膜を貫通する渦静脈の描出には至っていない。眼表面の構造から強膜を確実に描出し、さらに強膜構造や深部の強膜描出、強膜を貫通する渦静脈の描出や渦静脈の血流速度の測定には強膜断層画像解析に関わるコンピュータ及びソフトウエアの開発が不可欠である。 2021年はコロナ禍による各メーカーの技術者派遣の滞り、現地でのミーティング不足により、画像解析に関わるコンピュータ及びソフトウエアの開発が滞っていた。現状は現在撮影したデータを用いて解析をwebミーティングを積極的に行い、ソフトウェアアップデートを近日中に予定している。 また、同様にコロナ禍による海外学会中止、国内学会中止により研究成果の発表が困難となっていた。こちらもwebを利用した学会に参加、論文を早期に作成することにより、得られた知見を社会に還元していく。
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Research Products
(6 results)