2021 Fiscal Year Research-status Report
p27kips1の成体ミュラー細胞における転写制御機構の解析
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20K18361
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
須藤 則広 東邦大学, 医学部, 助教 (80646216)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 網膜発生 / 転写制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
p27Kips1(以下、p27)遺伝子は、細胞周期制御因子として細胞が細胞周期から離脱することを制御している。しかし近年は細胞周期制御因子としての機能以外に転写制御因子としての可能性についても注目が集まっている。本研究では網膜のグリアであるミュラー細胞のp27遺伝子の機能について解析を行っている。p27遺伝子は発生期の網膜前駆細胞で発現しており神経分化と共にその発現は減少するが、成熟した網膜ではなぜかミュラー細胞において強く維持されている。現在までにその機能は明らかではなく本研究において転写制御因子としての可能性を追求している。 これまでのp27ノックアウトマウスと野生型マウスを用いて網膜におけるRT-PCRの結果を元にRNAシークエンス解析を行い、網羅的な遺伝子変動について調べた。その結果全体的な傾向として発現が上昇する遺伝子が多くみられた。これらの結果はp27遺伝子が転写制御(転写抑制)に働いている可能性が示唆するものと考えられる。さらにp27ノックアウトマウスの網膜では外境界膜が壊れる変異が知られているが、これと関連し細胞骨格関連遺伝子群の上昇も見られたことからその関連性について今後検討する予定である。 またp27ノックアウトマウスの網膜では錐体細胞が減少していることが報告されているが、それに伴う組織の保護作用についての報告はこれまでなかった。本解析ではfgf2やedn2遺伝子などがp27ノックアウトマウス網膜で上昇していることも明らかとなり、他の網膜変性マウスと同様に保護作用が働いていることが推測された。従ってp27ノックアウトマウスが遺伝的な網膜変性マウスである可能性を示すものであるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はコロナウイルスや後半はウクライナ戦争も含め実験の進行に大きな影響があった。特に大学を移動したことにより通常よりも購入物品が多かったこともあるのだが、値上げや入荷に時間がかかる(1か月以上や納期未定など)などにより研究の進行に影響を与えた。
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Strategy for Future Research Activity |
p27遺伝子の転写制御因子としての機能を示すためにChIPシークエンス解析を行うことを最優先で考えている。これまでに網膜組織全体を用いてクロマチンを調整し、その試料を基にChIP assayを行ったが、網膜組織に占めるミュラー細胞の割合が低いこと、並びにp27の発現量がそこまで多くないことからChIPシークエンス解析に必要な量のサンプルが得られていない。そこで先に網膜組織からミュラー細胞を分離してからクロマチンを調整しChIP assayを行うことにした。ミュラー細胞特異的に発現する抗体と磁気ビーズを用いて細胞分離の予備実験を行っている。RT-PCRやウエスタンブロティング等を用いて分離の程度を評価しているが概ね良好な結果が得られている。
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Causes of Carryover |
本年度はコロナウイルスやウクライナ戦争等の影響により、行動抑制や物品入荷遅延(1か月以上や納期未定など)などが生じ、研究の進展が遅れた為。 2021年度未使用額については、2022年度分と合わせ、実験機器や消耗品などの購入や論文投稿費用など実験計画に沿って支出する予定である。
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