2021 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト網膜オルガノイドを用いたNMNAT1-LCA病態モデルの確立および解析
Project/Area Number |
20K18376
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
栗林 寛 東京大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (00734211)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 網膜 / 網膜変性疾患 / NMNAT1 / NAD |
Outline of Annual Research Achievements |
小児の遺伝性網膜変性疾患・レーバー先天性黒内障(LCA)の原因遺伝子の1つとしてNAD合成を担うNMNAT1が知られる。ノックアウト(KO)/変異型マウスやマウス網膜体外培養系におけるノックダウン実験により、NMNAT1の網膜発生・恒常性維持に対する重要性が示されてきた一方、ヒト網膜モデルを用いた機能解析は未踏であった。本研究では、CRISPR/Cas9/ssODNによる相同組み替え法を用い、NMNAT1変異型ヒトiPS細胞を樹立し、網膜オルガノイド形成におけるNMNAT1の機能解明を当初の目的とした。gRNA/Cas9発現プラスミド、ssODN、EGFP発現プラスミドをヒトiPS細胞へ導入し、NMNAT1-LCA患者を模すホモ接合型変異W169*の導入を試みたが、ヘテロ接合変異型やインデルを含む遺伝子型の細胞は得られた一方、ホモ接合点変異型の細胞を得ることが出来なかった。そこで本研究では、樹立済みのNMNAT1KO・ヒトiPS細胞を用い、網膜オルガノイド分化過程における表現型の評価と分子基盤の解析を追求した。2019年度までに、NMNAT1KOヒトiPS細胞由来・網膜オルガノイドにおいて網膜予定領域の形成不全を認めていた。qPCR、シングルセルRNA-seqを用いた遺伝子発現・細胞構成の解析を行なった結果、NMNAT1KO網膜オルガノイドでは分化早期に神経細胞分化が促進されている事を認めた。その結果、分化後期に生じる網膜形成が妨げられている可能性が示唆された。さらに、NMANT1KO網膜オルガノイドにおいてNADの低下とNAD消費酵素PARPの機能不全を認めた。これらの異常は、NADやNAD前駆体であるNMNの添加により回復する事を認めた。以上から、NMNAT1はヒト網膜形成に対しても必須の役割を担う事が示された。
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