2021 Fiscal Year Research-status Report
Endo180が角膜実質細胞におけるコラーゲン収縮能に果たす役割
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20K18401
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
高橋 彩 近畿大学, 奈良病院, 講師 (70460889)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Endo180 / 角膜実質細胞 / 角膜創傷治癒 / alpha SMA |
Outline of Annual Research Achievements |
角膜は水晶体とともに光の屈折を担う組織であり、視力の維持のためには透明であることが重要である。外傷や感染などで角膜実質が障害されるとしばしば不可逆的な混濁をきたすことがある。角膜実質創傷治癒過程において角膜実質細胞は筋線維芽細胞へ形質転換することにより、瘢痕形成や組織収縮に重要な役割を果たす。そのため角膜実質細胞の筋線維芽細胞への形質転換を制御することは角膜の透明性を保つうえで重要であると考えられる。また角膜実質細胞とコラーゲンとの相互作用は、角膜実質細胞の筋線維芽細胞への形質転換にも関与しており、角膜実質細胞に発現している種々のコラーゲン受容体の作用を解明することは重要であると考えられる。Endo180は、主に間葉系細胞に発現するマンノース受容体ファミリーのひとつであり、断片化したコラーゲンの細胞内への取り込みやコラーゲンへの細胞接着、また細胞移動の促進などに関与する。我々は角膜実質細胞において、Endo180が発現していることを昨年報告した。角膜実質におけるEndo180の機能を検討することは、角膜実質の瘢痕形成や組織収縮のメカニズムを考える上で重要な手がかりとなる可能性がある。そこで本研究では、角膜実質におけるEndo180の役割を明らかにすることを目的とし、生体角膜により近いモデルとして、角膜実質細胞をコラーゲンゲル内で培養し、コラーゲン受容体のひとつであるEndo180が角膜実質細胞の筋線維芽細胞への形質転換やコラーゲン収縮能にどのような影響を与えるかを検討して、角膜創傷治癒過程における瘢痕形成や組織収縮の抑制に対する臨床応用を目指して研究を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は下記のことが明らかとなった。
uPA遺伝子欠損マウス(uPA-/-)およびその野生型マウス(uPA + / +)から分離培養した角膜線維芽細胞 (CF) を用いて、uPAによるEndo180およびuPA受容体(uPAR)に対する作用が、α-SMA発現の調節にどのような役割を果たすかどうかを検討した。コラーゲンの影響についても検討するため、角膜線維芽細胞をコラーゲンゲル内培養(ゲル培養)とプラスチックプレート上培養(プラスチック培養)に分けて比較検討した。
1.uPA + / +CFのゲル培養では、uPA + / +CFのプラスチック培養に比べ、uPAの発現が有意に増強された。またゲル培養の条件で、uPA-/- CFは uPA + / + CFに比べ、α-SMAの発現が増強されたが、プラスチック培養の条件では両者の間に発現の差は認めなかった。ゲル内培養とプラスチック培養を比較すると、α-SMAの発現はゲル内培養で有意に亢進していた。2.ゲル内培養の条件で、uPA-/- CFは uPA + / +細胞に比べ、全長Endo180とuPARの量が増加しており、TGF-βの発現とSmad3リン酸化の両方において亢進していた。3.uPA-/- CFのゲル培養において、抗Endo180抗体添加により、uPA-/- CFのα-SMAおよびTGF-β発現は有意に抑制された。4.TGF-βシグナル伝達阻害剤は、uPA-/- CFゲル内培養のSmad3リン酸化およびα-SMA発現を有意に抑制した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果は、uPAの欠損がコラーゲンとEndo180の間の相互作用を促進し、TGF-βシグナル伝達を介したα-SMA発現を増加させる可能性があることを示唆している。このuPAによる負の調節機構が角膜実質の創傷治癒過程においてどのような役割を果たしているのかを今後検討する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍、海外から輸入の試薬の納期、製造が未定のものがあり3月末までに全額執行できなかった。令和4年度も試薬および実験器具を主に購入予定である。
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