2020 Fiscal Year Research-status Report
アデノ随伴ウイルスベクターを用いた緑内障に対する遺伝子治療の開発
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20K18404
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
北村 裕太 公益財団法人東京都医学総合研究所, 疾患制御研究分野, 研究員 (90868259)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | TrkBシグナル / 緑内障 / 遺伝子治療 / 樹状突起 / 軸索再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、緑内障に対して眼圧降下以外の新規治療薬の開発を目的とし、神経栄養因子による網膜神経節細胞(RGC)の保護作用に注目し、複数の栄養因子を併用することで神経保護作用が高まることを報告してきた。しかしながら、外部から神経栄養因子を投与する手法では、in vivoでのRGC神経保護効果は限定的であった。原因の一つとして、病的状態においてRGCにおける神経栄養因子の受容体の発現が低下している可能性が指摘されている。本研究では、代表的な神経栄養因子の一つである脳由来神経栄養因子(BDNF)の受容体であるTrkBに着目し、TrkBを用いた遺伝子治療により、視神経の軸索再生及び神経保護を促すことで視機能回復がもたらされるか検討した。これまでに、BDNF-TrkBシグナルの下流のシグナル全体をリガンド非依存的に恒常的に活性化する活性型TrkBを独自に開発し、この常時活性型TrkB分子をアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いてRGCで発現させることで、視神経の軸索障害モデルにおいて軸索再生が促進し、またRGC樹状突起の保護効果が得られることを見出している。また、正常眼圧緑内障のモデル動物であるGLAST KOマウスにおいて、同分子のAAVベクターを投与することにより、一部のRGCサブタイプではRGC樹状突起の保護効果が見られることを確認した。現在本治療により視神経の軸索再生やRGC保護が促されるメカニズムの一端を解明することを目標に研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19蔓延の影響で研究試薬が不足する期間があったが、代替の試薬を用いて対応した。活性型TrkBシグナルによる軸索再生及び神経保護のメカニズムについて、特にミトコンドリアやエネルギー代謝に注目し解析途中である。
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Strategy for Future Research Activity |
エネルギー代謝との関連に着目し、RGC樹状突起及び網膜内の軸索内のミトコンドリアを可視化し、in vivo imagingによりミトコンドリアの動的変化を観察する手技の確立を目指したい。また、遺伝子治療により視中枢まで視神経軸索を投射できることが可能となりつつあることから、RGCのシナプス終端である上丘での解析を細胞レベルで行うため、組織透明化と免疫染色を同時に行うことで立体的な解析手法の確立を目指している。
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Causes of Carryover |
次年度の研究に必要な試薬および消耗品の購入費用として、節約に努めたため当該助成金が生じた。今後各種抗体や組織透明化およびAAVベクター作成に必要な試薬類の費用として用いる予定である。
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