2020 Fiscal Year Research-status Report
羊膜由来間葉系幹細胞を用いた糖尿病足病変の感染制御
Project/Area Number |
20K18406
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
北條 正洋 北海道大学, 大学病院, 医員 (80866666)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 間葉系幹細胞 / 羊膜 / 再生医療 / 糖尿病性潰瘍 / 創傷治癒 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病性足病変は糖尿病患者の下肢に生じる感染、潰瘍、深部組織の破壊性病変とされ、難治性で予後不良である。一方、間葉系幹細胞は様々なサイトカインを産生し、血管新生作用、抗炎症作用、神経再生促進作用など、創傷治癒を促進する作用を持つが、細菌増殖を抑える効果も報告されており、感染制御にも有用と考えられる。間葉系幹細胞は骨髄、脂肪、胎盤(羊膜)などから樹立できるが、通常分娩後に廃棄される胎盤からは侵襲なく幹細胞を大量に採取することが可能である。また胎児由来の幹細胞であるため細胞機能が高く、より大きな効果が期待できる。本研究は、羊膜由来間葉系幹細胞が糖尿病足病変の感染を制御するか、動物モデルを用いて検証することを目的とした。 そこで初年度は、羊膜由来間葉系幹細胞の外用が、糖尿病マウスの創傷治癒を促進するか検討した。まずはマウスにストレプトゾトシンを腹腔内投与し、糖尿病を誘発することで糖尿病マウスを作成し、背部に皮膚全層欠損創を作成した。幹細胞含有ゲル、あるいはコントロールゲルを外用し、創傷治癒効果について同様に背部皮膚全層欠損創を作成した非糖尿病マウスと比較検討した。 潰瘍作成後、2日毎に創部の観察およびゲルの外用を行い、潰瘍面積の変化について評価した。コントロールゲルを外用した糖尿病マウスでは、非糖尿病マウスに比べて創閉鎖が遅延したが、羊膜由来間葉系幹細胞含有ゲル外用により、創傷治癒は促進された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々が作成した糖尿病性潰瘍モデルにおいて、非糖尿病モデルに比べ創傷治癒が遅延することが確認できた。また羊膜由来間葉系幹細胞を含有するゲルが、糖尿病モデルの創傷治癒遅延を改善することが明らかとなり、感染創における創傷治癒も改善する可能性が期待できる。今回作成モデルの潰瘍に細菌を播種することで、羊膜由来間葉系幹細胞が糖尿病足病変の感染を制御するか検討するための動物モデル作成が可能となり、研究はおおむね順調に進んでいると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
作成した糖尿病性潰瘍モデルの潰瘍底に黄色ブドウ球菌あるいは緑膿菌を播種し、感染創を作成する。そして幹細胞あるいは培養上清を含んだゲルを外用し、局所および全身の感染兆候について、コントロールゲル外用群と比較する。潰瘍作成後7日目及び14日目に、潰瘍を中心に直径10mmの皮膚および皮下組織、筋を一塊に採取し、病理組織学的検討を行う。HE染色で病原菌の有無や数、局在を確認し、免疫染色ではMPOやF4/80、CD3抗体等を用いて好中球やマクロファージ、リンパ球の浸潤の程度を比較する。採取した組織の一部からmRNA抽出を行い、感染制御や炎症などに関わる因子の遺伝子発現(TGF-β、IL-4など)をreal time PCRで検討する。
|
Causes of Carryover |
本年より動物モデルを作成し、実験を開始した。当初の計画では本年度に黄色ブドウ球菌や緑膿菌を用いた感染モデルの作成まで実施する予定であったが、COVID-19感染に伴う実験施設の使用制限により、創傷治癒効果の評価に留まった。次年度以降で当初計上した動物を使用する予定であり、動物購入および飼育・管理費用、細菌の購入費用として151009円を計上した。
|