2020 Fiscal Year Research-status Report
神経吻合部の早期機能回復に対する多血小板血漿の効果の検討
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20K18410
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
黒澤 小百合 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 医員 (70866839)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多血小板血漿 |
Outline of Annual Research Achievements |
多血小板血漿は自家組織由来の創傷治癒促進剤として、創傷治癒の領域でその有効性が確立されてきており、最近では保険適応も認められている。一方で神経再生はその機序について未だ研究段階であり、臨床においても術後の神経回復を促進させるより有効性のある手段は乏しい。多血小板血漿が創傷治癒と同様に神経再生に有効性が認められれば、自己組織由来の安全に使用できる、より効果的な治療法として患者に提供できるようになると考える。本研究では多血小板血漿の投与による縫合神経回復の組織学的課程の変化や、神経回復速度の変化について、その有効性を明らかにしていくことを目的とした。また自家組織由来で安全であるのが多血小板血漿の利点であるが、実臨床では血液製剤を使用し多血小板血漿を精製している報告や、あるいは重度貧血等の理由で多血小板血漿の使用が困難な症例が認められている。このような観点から、自家由来と同種異家由来の多血小板血漿での効果の違いも検討することとした。 実験内容としては、Wistar系ラットを用い多血小板血漿を精製し、坐骨神経を2箇所で切断し再縫合ののち、縫合部に多血小板血漿を添付する。多血小板血漿を添付しない偽手術を行う群をコントロールとし、機能的、組織学的に検討を行う。さらに対象ラットは、自家由来の多血小板血漿を使用する群と、同種異家由来の多血小板血漿を使用する群で分け、その違いを検討する。 上記のように動物実験が主体であるが、2020年度は新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言の発出が相次ぎ、施設規定により新規の動物実験の開始を見送らざるを得ず、さらに実験動物センターの利用講習等も延期された。そのため、実験計画の作成が主な活動となり、2020年度内は年度末にラットや物品の準備、搬入を行ったのみとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度は新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言の発出が年度初めからあり、年度内を通してその期間も長期であった。その間施設規定により実験規模の縮小が余儀なくされ、新規の動物実験の開始を見送らざるを得ず、さらに実験動物センター使用に必要な利用講習等も延期された。そのため、実験計画の作成、承認が主な活動となり、2020年度内は年度末にラットや物品の準備、搬入を行ったのみとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは多血小板血漿作成手技の安定を目指す。それができれば、ラットを①自家多血小板血漿移植群、②同種異家多血小板血漿移植群、③コントロール群にわけ、坐骨神経の切断、縫合を行う。その後は術後一定期間ごとにSciatic Functional Indexを評価し、術後8週で移植神経を露出させ、末梢神経伝導速度を測定。その後神経採取し、組織学的検討を行う。 実験を遂行するうえで、末梢神経伝導速度の測定は実験動物センターの施設の性質上困難となる可能性が高く、やむを得ない場合は省略も検討する。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言が複数回発出され、その間研究規模の縮小が余儀なくされ、新規研究は原則開始できない状態であった。またそれに伴い、実験動物センターの使用に必要な利用者講習会も延期されたため、実験計画書の作成の開始も遅れた。よって2020年度は実験計画の作成と初期物品購入のみとなった。 今後は手術用の実体顕微鏡や、カメラ、解析用のコンピューター等が必要になると考えられ、また実験動物や物品、資料等に主に使用していく予定である。
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