2020 Fiscal Year Research-status Report
羊膜マイクログラフト混成型人工神経による末梢神経再生
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20K18414
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
岩尾 敦彦 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (90816638)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 凍結羊膜 / 人工神経 / 末梢神経再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本実験に先立ち、3回の予備実験を行った。 予備実験①:微細組織片とした凍結羊膜をシリコンチューブに充填し混成型人工神経モデルを作成した。これをラット10mm坐骨神経欠損モデルに移植した(各群1匹)。術後4週で評価を行い、シリコンチューブ単独と比較して、肉眼的に良好な神経再生を確認した。 予備実験②:混成型人工神経(シリコンチューブ)をラット10mm坐骨神経欠損モデルに移植し、術後4週、8週、12週で評価を行った(各時期・角群2匹)。術後8週までは羊膜(+)群で肉眼的に良好な再生を認めたが、術後12週では羊膜(-)群の方が神経再生は良好であった。羊膜の効果が短期的なものである可能性が示唆された。 予備実験③:実際に市販されている人工神経を使用した。5mm欠損として、endpointを8週に設定した(各群2匹)。評価項目は免疫組織染色(神経:NF20, S100・筋肉:マッソントリクローム染色)、前脛骨筋の湿重量比、電子顕微鏡、筋電図、歩行解析(Sciatic Function Index)、toe spread test、pin prick testとした。 現在結果の解析中であるが、神経の免疫組織染色では羊膜(ー)群の方が軸索再生数及びシュワン細胞数は多い印象であった。筋肉の病理組織学的検査結果及び湿重量比については差はなかった。電子顕微鏡では髄鞘化された軸索の数は羊膜(+)群で多い印象であったが、軸索自体の直径は羊膜(ー)群の方が太い印象であった。筋電図ではTL、CMAP、NCVのいずれにも差は認められなかった。Pin Prick Testは評価者によってばらつきが多く、一定の評価を担保することが難しかった。人工神経内に微細組織片化した羊膜組織を充填してしまうと、軸索再生の物理的なバリアとなり、神経再生を阻害する可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始段階で最も懸念された事項は、評価項目の設定であった。先行研究者への相談、及び文献検索により、評価項目は以下のものとすることにした。①神経の病理組織学的評価(NF20, S100, 抗ヒトビメンチン抗体:光学顕微鏡40倍でランダムに10視野を測定する)、②電子顕微鏡(髄鞘化された軸索数, 軸索の直径, G ratio:1000倍でランダムに5視野測定する)、③神経支配領域の筋肉の評価(患側と健側の前脛骨筋・腓腹筋の湿重量比, 及びマッソントリクローム染色での病理組織学的評価:光学顕微鏡40倍でランダムに20の筋線維を計測する)、④筋電図(Terminal latency, Nerve Conduction Velocity, Compound Muscle Action Potential)、Toe Spread Test、Grid-walking test。なお各評価方法に対する手技も予備実験を通して確立しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で羊膜を使用することで既存の人工神経の効果を高めるという目標は達せられていない。予備実験を通してはっきりとしたことは人工神経内部に羊膜を充填してしまうと軸索再生の物理的なバリアとなっている可能性である。またこれまでの予備実験で使用した羊膜は全て凍結羊膜である。凍結羊膜は新鮮羊膜と比較して、間葉系幹細胞の数や増殖因子の割合が少ないことが知られている。次に計画している予備実験は、ラット5mm坐骨神経欠損モデル(各2匹)に市販の人工神経を移植し、坐骨神経近位及び遠位と人工神経全体を新鮮羊膜で被覆するというものである。この予備実験で神経再生促進傾向が認められた場合には、モデルの匹数を増やし本実験を行う予定である。
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