2021 Fiscal Year Research-status Report
難治性リンパ浮腫の発症におけるTRPチャネルの関与とその分子機構
Project/Area Number |
20K18415
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
上野 一樹 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (30817028)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | TRPV1 / 創傷治癒 / 好中球 / 炎症応答 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
リンパ浮腫の発生要因として、慢性炎症と線維化が大きく関わっている事は既知の事実である。また、形成外科領域に重要な皮膚の創傷治癒過程においても炎症、線維化が大きく関わって事が知られており、リンパ浮腫と創傷治癒は密接な関係である事が示唆される。 TRPチャネルファミリーは種々の細胞に存在し、様々な物理刺激、化学刺激に反応する。 その中でも最近注目されているTRPV1チャネルは、眼の線維化に関与することが既に報告されており、TRPV1が皮膚における創傷治癒、ひいてはリンパ浮腫とも大きく関与している可能性がある。 今回、まずは皮膚における創傷治癒過程と、TRPV1チャネルの関連を明らかにするために、 TRPV1ノックアウトマウスを用いて、各々の背部皮膚欠損創の創傷治癒についての解析を行った。創傷治癒過程を経時的に観察したところ、大変興味深いことに、TRPV1ノックアウトマウスにおいて、有意に創傷治癒遅延が生じることが判明した。 また、その原因検索のため、細胞増殖系、細胞接着系などを中心に分子及び組織学的解析を行ったが明らかな差を認めなかった。また炎症細胞であるマクロファージ数の差も認めなった。一方、驚くべきことに、TRPV1ノックアウトマウスにおいて好中球性の炎症の遷延化を認めた。この現象が創傷治癒遅延の原因となっていることが示唆されるため、現在更に好中球の動態やその性質とTRPV1の関連について解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TRPV1ノックアウトマウスの創傷治癒について解析を行い、マクロファージ数には変化がないにもかかわらず、好中球性の炎症が遷延化していることを確認した。TRPV1を介した創傷治癒と好中球の関連については、これまでほとんど注目されていない。現在更なる解析中であり、第一報として、投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
好中球は組織障害後に炎症応答の一部として創部に動員されることが一般的に知られているものの、TRPV1チャネルと好中球の関連については報告が極めて少ない状況である。好中球による創傷治癒への効果を、申請者が樹立したTRPV1ノックアウトマウスでの実験系において種々の組織学的検査、組織検定等の手法で解析予定である。
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