2020 Fiscal Year Research-status Report
Breakthrough in Oncoplastic Skin Surgery
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20K18431
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石川 耕資 北海道大学, 大学病院, 助教 (60791374)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 局所陰圧閉鎖療法 / 悪性腫瘍 / 悪性黒色腫 / メカノバイオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性腫瘍残存創に対するnegative pressure wound therapy (NPWT)は禁忌とされており、NPWTを開始するためには切除後に病理学的評価で断端が陰性である事を確認する必要がある。一方で、NPWTが悪性腫瘍を増悪させる恐れがあるとされているが、それを裏付けるエビデンスは存在しない。 皮膚悪性腫瘍に対する手術では、一定のマージンを含めた切除を要するため、組織の欠損は広範囲に及ぶ。NPWTが悪性腫瘍に悪影響を及ばさない場合、術後早期からNPWT開始が可能となるため、入院期間の短縮のみならず植皮の適応範囲の拡大により大きな皮弁が不要となる。これは侵襲の高い手術の困難な高齢者に対して、低侵襲な再建を可能とする。また、良好なwound bed preparationを得ることで植皮の整容性の向上を図ることができる。 本研究の目的は、NPWTが悪性腫瘍を増殖・悪化させるのか、更にはNPWTの条件によって悪性腫瘍増殖の程度に違いがあるのかを解明することである。 まず初年度としてマウスを用いたNPWTモデルの作成・手技の安定を図った。当初2cm大の皮膚欠損作成を予定していたが、NPWTのフィルム装着の張りしろの確保が困難だったため、1cm大の皮膚欠損へ変更を行なった。また実験中の潰瘍の縮小予防並びにNPWT施行中のリーク防止目的にエッペンドルフチューブをカットして筒状にしたものを潰瘍部に固定することとした。またフォームのサイズが小さく、通常のNPWTのポートは使用できなかったため、ネラトンカテーテルを加工して代用した。上記の通り一部変更はあるものの、マウスを用いたNPWTモデルの確立が図られたため、今後予定していた悪性腫瘍を用いた様々な評価検討を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度としてマウスを用いたNPWTモデルの作成・手技の安定を図った。当初2cm大の皮膚欠損作成を予定していたが、背部の湾曲に対して潰瘍縮小目的に使用するチューブの密着度が低く、更に潰瘍周囲のリーク防止のためのフィルム貼付面積が不足し、数時間のNPWT時間内にリークが頻回に見られた。これにより2cm大の皮膚欠損作成は困難と判断し、1cm大の皮膚欠損へ変更を行った。またフォームのサイズが小さく、通常のNPWTのポートは使用できなかったため、ネラトンカテーテルを加工して代用した。また潰瘍縮小予防のためのチューブは2mlのエッペンドルフチューブを使用し、筒状にカットして加工し、潰瘍辺縁の皮膚と縫合を行い固定することで潰瘍縮小予防のための土台を作成した。上記の通り一部変更を必要としたものの当初の予定に近い形でのモデル作成が可能であった。マウスを用いたNPWTモデルの確立が図られたため、このモデルを用いて悪性腫瘍とNPWTの関係性に対する評価をこれまでに我々の研究グループで確立してきた手技を用いながら評価を行っていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究1のNPWTモデルに準じて行う。連続モードの圧設定を-25, -75, -200mmHgの3種類に分けて超低陰圧・低陰圧・高陰圧モデルを作成する。また間欠モードについては、5分間隔および10分間隔のモデルを作成する。これらの陰圧レベルおよび間欠モードにおける刺激頻度の違いにより、悪性腫瘍(メラノーマ)の増殖能がどのように変化するかを評価検討し、臨床を想定した適切な圧設定を検討する。評価については以下の評価を施行予定である。 In vivo imaging:超高感度In vivo imaging技術を用いて腫瘍浸潤範囲の評価および発光量による定量評価を行う。また腫瘍の増悪を来した場合、転移が予想される。そのためマウスを安楽死させ、転移の有無および転移巣における腫瘍細胞の総量をルシフェラーゼアッセイにより評価する。 組織学的評価:NPWT期間終了時に潰瘍中心部および潰瘍辺縁から組織を採取し、HE染色を行い、メラノーマの浸潤の深さや範囲を評価する。更にS100, MelanA, Ki67, SOX10などの免疫染色を行い、メラノーマの増殖能の変化を評価する。 リアルタイムPCRおよびWestern blot:メラノーマの腫瘍深達度の指標であるBreslow Score毎に分けてIL-2, IL-6の発現量を評価すると、メラノーマの予後を反映するマーカーとなり得ると(Kucera R, et al. Anticancer Res. 2015)報告した。このIL-2, IL-6に加えてTRP-1, TRP-2, MART-1, p97, MAGE-3, αSMA, SOX10などの発現を定量評価し、Groupによる違いを見ることで、悪性黒色腫の増殖能の変化を評価する。 以上の評価を通じて、NPWTとメラノーマの増殖の関係性を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大による動物実験の遅延により動物実験の予定個体数に満たなかったため、次年度に延期した個体数があること、また個体数の減少に伴い、NPWT装置レンタル費用や悪性腫瘍の評価に伴う費用についても今年度から来年度に繰り越すこととなったため、一部金額を次年度に繰り越すこととした。
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