2020 Fiscal Year Research-status Report
人工乳房に対する未分化大細胞型リンパ腫発生機序の解明-免疫反応と慢性炎症の関与-
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20K18432
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三浦 千絵子 東北大学, 大学病院, 医員 (80509240)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 乳房再建 / 人工物再建 / インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫 / BIA-ALCL / シリコンインプラント |
Outline of Annual Research Achievements |
乳癌術後の乳房再建術においてシリコン製の人工物は広く普及しているが、近年ブレストインプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)による死亡例も報告され問題となっている。BIA-ALCLは表面に凹凸のあるテクスチャードタイプの人工物での発生が多いとされているが、発生機序は解明されておらず原因究明が急務である。本研究では、シリコンの表面形状の違いによる免疫学的反応および関与するシグナル伝達回路、さらに慢性炎症遷延とBiofilmとの関連性について検討することを目的とし、これによりBIA-ALCL発生機序、予防および治療法の確立を目指すものである。 まず、シリコンの表面形態による生体反応の違いを解析するため、textured typeとsmooth typeのシリコンシートをそれぞれ野生型マウスの背部に埋込み、組織学的解析を行ったところ、textured群が有意に周囲に形成される被膜組織の厚さが厚く、多くの細胞が集積している結果が得られた。さらに免疫染色による解析により、集積細胞は主にマクロファージであることが示された。フローサイトメトリーによる集積細胞解析においても同様にマクロファージの著明な集積が示され、textured typeのシリコンシートはマクロファージによる免疫応答が強いという結果が得られた。 一般的に異物に対する生体反応にはマクロファージが関与しているとされ、被膜組織の形成に関わるとされているが、被膜形成に至るまでの詳細なメカニズムは解明されておらず、また、約2週間程度でそれらの反応は消退し始めるとされている。しかし本研究により、textured typeのシリコンは挿入後120日が経過してもマクロファージの著名な集積が継続することが示された。これにより、textured typeのシリコンはマクロファージを中心とした炎症が遷延する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初使用予定であったtextured typeのシリコンシートがBIA-ALCLの発生リスクが原因としてFDAより自主回収となり今後同一製品の入手は不可能となったが、既に研究用にシリコンシートの作成を済ませていたため、現状まではシリコンシートの供給に問題がないため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果を踏まえ、マクロファージのサブタイプの解析や被膜形成に至るメカニズムおよびシリコン表面形態による反応の違いをもたらす機序の解明を目指す。ELISA法およびPCRによるサイトカインの解析や、これらの反応とパターン認識受容体との関連性を検討するため、遺伝子ノックアウトマウスを使用した比較検討を行う予定である。 また、BIA-ALCLの発生率が高いとされるtextured typeのシリコンインプラント製品がFDAによる自主回収となり、今後同一製品の入手は不可能となったため、当初予定していたBIA-ALCL動物モデル作成方法の開発については別のtextured typeのシリコンシートを用いるなど一部計画の変更が必要になる可能性がある。
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