2021 Fiscal Year Research-status Report
幹細胞産生因子を用い形成する脂肪移植至適環境の開発
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20K18437
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
太田 智之 岡山大学, 大学病院, 医員 (90869140)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脂肪幹細胞 / 培養上清 / 移植環境 / 幹細胞産生因子 / 皮下反復注射群 / ELISA / 徐放性基材 / 脂肪保持率 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は幹細胞研究において注目されている幹細胞産生因子に着目し、脂肪移植の生着率をより良くするための移植環境を探索している。 R3年度までに脂肪由来間葉系幹細胞の培養上清や徐放性基材を用い、ラットによる脂肪移植実験を行っている。具体的にはまずラットの鼠径部の脂肪より抽出した脂肪由来間葉系幹細胞を、血清含有培地にてサブコンフルエントに達するまで培養を行い、培地を無血清のものに変更し48時間培養した時点で培養上清を回収する。次に培養上清の投与法の検討のために背部に1mlずつ上清または生食を注入する皮下反復注射群と、皮下に上清と生食を含侵させた徐放性基材 (MedGel、ペルナックG)を埋植した徐放基材群を作成した。3週間後に鼠径部より脂肪を採取し、(脂肪移植の時点で組織の一部を採取して組織学的検討を行った)細かく破砕したものを前述の移植環境作成部位に各1mlずつ注入した。移植後2週,4週,6週,8週の時点でCTにて移植脂肪の容量の経時的変化を計測し、移植後8週時点で組織を採取して組織学的検討を行った。 生食の反復注射を行った個体が脂肪注入時の麻酔で死亡したため、上清の反復注射を行った個体の注射部位から少し離れた部位にコントロールとして脂肪移植を行った(「無処置」とする)。移植脂肪の体積はコントロール群である無処置を除くと、徐放基材群での脂肪の保持率が高い傾向が認められた。しかし、上清反復投与群と同一個体に移植したためかコントロール群で脂肪体積の増大が認められた。 さらに培養上清を用いて、脂肪由来間葉系幹細胞が産生している成長因子(VEGF,HGF,bFGF)のELISA法による検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
R2年度の実験ではコントロール群作成のための反復生食注射ラットが実験経過中に死亡し、反復上清注射群の別部位に無処置のコントロール群を作成することとなった。結果、無処置群の移植脂肪が移植前より増加してしまった。(上清の投与が遠隔的に作用した可能性がある。)また、背部への移植ではCTでの解析が難しい結果となった。詳しくは後述するが、これらの移植実験の結果をふまえて移植部位や方法を修正した第2回移植実験を開始しており、今後解析待ちである。 ELISA法では脂肪由来間葉系幹細胞2日間培養下でbFGFの産生が乏しく、他の成長因子の比産生速度はVEGF:2×10-4(pg/ce//hr)、HGF:1.1×10-5(pg/cell/hr)という結果となった。しかしながら、ELISA法による検討結果をふまえて施行予定であった免疫染色による組織学的検討は行えておらず、脂肪の生着率に関与する因子の解析は進捗が乏しい。その観点から実験は(3)やや遅れていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
以前の実験では、CT撮影時や組織採取時に移植部位の正確な同定が困難である、麻酔薬によるコントロール個体が死亡した、などの問題点があったために以下の様に実験系を修正した。①皮下脂肪が薄く、移植脂肪と周囲の組織との境界が比較的明瞭な頭部を移植部位とする。②生食反復注射群、上清反復注射群の他に徐放基材埋入群はペルナックGプラスの1種類のみとし、代わりに各群のサンプル数を増やす。 今回の移植実験のサンプルに関してもCTでの移植脂肪の容量の経時的変化の解析や組織学的検討を行う予定である。ELISAでは成長因子間で明らかに有意と思われる差は出なかったものの、血管新生などで脂肪の生着と関連があると思われるVEGFやHGFなどの成長因子の免疫染色などは行う予定である。
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Causes of Carryover |
R3年度は依然として新型コロナウイルス感染症の流行のため学会参加や共同研究者との対面ミーティングの機会減少による旅費の使用がなかった。 R4年度は組織解析用の抗体の購入予定や既に購入している動物実験費用が加算されるためR3年度未使用額を充当する予定である。
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