2021 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of embryonic vascular development in the skin
Project/Area Number |
20K18445
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鈴木 彩馨 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (80724062)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 創傷治癒 / 血管新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
血管新生は創傷治癒過程において重要な役割を果たすことが広く知られている。本研究においては、マウス胎生期の体幹部組織を研究材料として、発生段階の皮膚の血管形成メカニズムの一端を明らかにすることによって、創傷治癒に関連する血管新生メカニズムについての新たな知見を得ることを目的に実験を行ってきた。 これまでの実験によって、マウス発生期における体幹部の血管新生の様子についていくつか新規の知見を得ることができた。まず、胎生11日目に側胸部~側腹部において肋間動脈から皮膚へ穿通する血管が立ち上がり、それを起点として腹側および背側へ血管網が形成されていくことが分かった。胎生13日目頃までに体幹部皮膚のほぼ全域にわたり血管網が形成される、という全容を掴むことができた。 マウス胎仔のscarless wound healingのメカニズムを探る研究の一環として皮膚の創傷治癒過程を観察した実験においては、胎生13日目までの創は跡形なく治癒する「再生」の様式を取り、一方、胎生14日目以降の創は何らかの瘢痕を残して治癒する「修復」の様式となっていた。胎生13日目までの時期は上記の通り体幹部の血管新生が盛んに起こる時期であり、皮膚再生と血管新生との関連性が示唆される結果だと考えられた。 多くの組織において血管新生を制御する因子であることが知られているHIF-1とVEGFが本モデルにおいても関与している可能性を考え、胎生11日目から胎生13日目の時期において、それぞれ側胸部と背部正中部から組織を採取してそれぞれの遺伝子発現を比較したが、いずれも有意差を認めなかった。HIF-1やVEGFが実際に胎仔皮膚の血管新生に関与しないのか、あるいは組織採取方法に伴う技術的問題なのかは結論を出すには時期尚早であり、他の実験系の結果も含めて議論すべきだと考えられた。
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