2020 Fiscal Year Research-status Report
アミノ酸輸送体を介した新規アミノ酸味覚受容機構の解明
Project/Area Number |
20K18458
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩田 周介 九州大学, 歯学研究院, 助教 (60780062)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ASCT / 味覚 / ナトリウム依存性中性アミノ酸トランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
摂食時、味覚は極めて重要な役割を果たす。アミノ酸は、生体を形作るタンパク質の構成成分として必要不可欠な物質であり、現時点でうま味受容体T1R1/T1R3が唯一のアミノ酸の味覚受容体として報告されている。しかしながら、過去の報告から、うま味情報はアミノ酸要求を生じる情報として重要性は低いと考えられ、さらに、外界からの摂取が必要不可欠な必須アミノ酸はうま味受容体に対し低親和性を示す。従って、うま味受容体が外環境からのアミノ酸摂取を担う唯一の受容体として機能するとは考えにくい。予備実験の結果から、 本来腸管で機能するアミノ酸輸送体が、口腔におけるアミノ酸の味覚受容にも関与している可能性を見出した。さらに、この経路はメタボリックセンサーKATPチャネルにより制御を受けるカロリー受容系のシグナル経路としても機能する可能性が考えられる。本研究では、この新規アミノ酸受容体と情報伝達機構の解明を目指す。現在までに、マウス舌前方部を支配する茸状乳頭、および後方部を支配する有郭乳頭の味蕾に、ナトリウム依存性中性アミノ酸トランスポーター(ASCTs)が発現することがわかった。さらに、マウス鼓索神経応答解析術の結果から、このASCTsの透過性の高いアミノ酸でASCTs阻害薬であるL-γ-Glutamyl-p-nitroanilide(GPNA)舌処理により、応答の抑制が生じることが明らかになった。他の味質、および透過性の低いアミノ酸ではこの効果は認められなかった。さらに透過性の高いアミノ酸では、低濃度Naの添加により応答の増強が生じ、これはGPNAにより消失することがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RT-PCRの結果から、ASCT1及び2がマウス味蕾の茸状乳頭および有郭乳頭に発現していることがわかった。次に、マウス鼓索神経応答を用い、野生型マウス(B6)でASCTs阻害薬L-γ-Glutamyl-p-nitroanilide(GPNA)舌処理が各味応答に与える影響を調べた。味溶液として現段階では100mM NaCl、100mM KCl(以上、塩味)、500mM スクロース(二糖類)、500mM グルコース(単糖類)、1mM SC45647(人工甘味料)、10mM キニーネ塩酸塩(苦味溶液)、10mM 塩酸(酸味溶液)、300mM グリシン、300mM アラニン、200mM グルタミン、100mM セリン、100mM ヒスチジン、300mM プロリン、300mM アルギニン(以上、アミノ酸)を用いた。その結果、アミノ酸以外の5基本味溶液に対する応答では変化は認められなかったが、一方でアミノ酸に対する応答では、ASCTsの透過性の高いグリシン、アラニン、グルタミン、セリン、ヒスチジンではGPNAにより応答の減少が認められることがわかった。透過性の低いプロリン、アルギニンではGPNA処理による影響は見られなかった。また、アラニン、グルタミンでは10mM以上のNaClの添加により応答の増強作用が生じたが、低親和性を示すプロリンでは増強作用は生じないことが明らかとなった。このアラニン、グルタミンで認められた増強作用は、GPNA処理により消失した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、他のアミノ酸味応答に与える影響についても検証する。また、一部の甘味、うま味を呈するアミノ酸は、甘味受容体や、うま味受容体とも結合する。そこで、これらの受容体の構成分子であるT1R3を遺伝子欠損させたマウス(T1R3-KO)における10mM NaCl添加による影響、及びGPNA処理の影響についても検証する。さらに、舌後方部を支配する舌咽神経における味応答にたいしてGPNAが与える影響についても検討する予定である。ASCTsの味蕾における各味細胞での発現様式を、免疫組織化学的手法を用い、T1R3(甘味受容細胞マーカー)、Car4(酸味受容細胞マーカー)を用い調べる。qRT-PCRを用い、アミノ酸トランスポーターの発現量に関して、味蕾を有しない上皮と、茸状、有郭乳頭味蕾とで比較を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
想定より購入品を安価に購入できたことから次年度使用額が生じた。この次年度使用額は、早期に使用する。
|
-
-
[Journal Article] Drinking Ice-Cold Water Reduces the Severity of Anticancer Drug-Induced Taste Dysfunction in Mice.2020
Author(s)
Ayana Osaki , Keisuke Sanematsu , Junichi Yamazoe , Fumie Hirose , Yu Watanabe , Yuko Kawabata , Asami Oike , Ayaka Hirayama , Yu Yamada , Shusuke Iwata , Shingo Takai , Naohisa Wada , Noriatsu Shigemura
-
Journal Title
International journal of molecular sciences
Volume: 21
Pages: 1-16
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-