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2021 Fiscal Year Research-status Report

歯根嚢胞モデルマウスの確立と治療法開発に向けた発症・成長メカニズムの解明

Research Project

Project/Area Number 20K18462
Research InstitutionIwate Medical University

Principal Investigator

熊上 深香 (坂野深香)  岩手医科大学, 歯学部, 常任研究員 (30710826)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2023-03-31
Keywords細胞・組織 / 歯学 / 歯の発生 / 細胞遊走 / 歯根嚢胞 / ヘルトヴィッヒ上皮鞘 / マラッセ上皮遺残 / 上皮間葉転換
Outline of Annual Research Achievements

歯根嚢胞は,根尖の慢性炎症に起因したヘルトヴィッヒ上皮鞘(HERS)あるいはマラッセ残 存上皮の増殖による歯原性嚢胞と考えられているが,嚢胞発生に関わる上皮細胞の特性は十分に理解されていない。歯冠の形態形成終了後,エナメル上皮はHertwig上皮鞘(HERS)を形成して歯根象牙質の成長を誘導する。HERSは,伸長しながら歯冠側で断裂を起こしてMalassezの上皮遺残 (ERM) を発生する。ERM成因は,アポトーシス説と上皮間葉転換(EMT)説で議論が分かれるが,我々はHERSの動態観察や周囲でのTGF-βの発現,TGF-βによるEMTの誘導実験から後者の説を主張している。そこで,細胞骨格制御に関わるRhoシグナルの低下がHERS細胞のEMTに関連していること,Rhoシグナルの制御にTGF-βが関係していること,TGF-βの活性化制御に歯根膜線維が関係していることを想定した。また,歯根嚢胞が生じるメカニズムの仮説として,炎症環境下で歯根膜線維が破壊され,歯根膜(フィブリリン)に トラップされていたTGF-βが放出され,HERSやERMのRhoシグナルの低下が起こり,細胞遊走し,肉芽の中に散在し嚢胞を形成すると考え,実験を行った。
組織学的解析から,HERSはSemaphorin(Sema)4Dと 受容体PlexinB1,B2を,また隣接する歯乳頭はSema4Aを発現することを認めた。 一方,HERSから遊走した細胞はCK14には陽性であったが,E-cadherinやactive RhoAは陰性を示した。次に,Rhoキナーゼ阻害剤やTGF-βがHERS細胞の遊走性を促進する一方で,Sema4A,Sema4Dは遊走性を抑制した。以上の結果より,Sema4A,4DとTGF-βは,相反する作用によってHERSの上皮としての維持とERM発生のバランスを調節していると考えられた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

1.HERSおよびHERS由来の細胞の上皮性マーカーの変化を調べるために,マウス下顎第一臼歯におけるCK14およびE-Cadの免疫組織化学染色を行った結果,HERSを構成していた歯冠側の細胞の一部は,上皮由来の細胞でありながらも間葉様の特性を獲得すること,それに伴い細胞遊走性が促進することを示唆する結果が得られた。
2.HERSにおけるSema4AおよびSema4Dの発現とRhoAの活性化状態の相関を調べるために,マウス下顎第一臼歯においてSema4A,Sema4D,活性型(GTP結合)RhoAの免疫組織化学染色による解析をおこなった結果,Sema4AおよびSema4DとRhoAの活性は,HERSの維持に重要であることを示唆する結果が得られた。
3.Sema4AとSema4Dおよび活性型RhoAの組織学的相関を踏まえSema4AとSema4DがRhoAを活性化するかを調べるため,培養細胞株HERS01aを用いて免疫蛍光染色による解析を行なった。HERS01aをrSema4AとrSema4Dで6時間/1時間/5分間/1分間反応させた。その結果,1時間および5分間反応させた場合に細胞膜に活性型RhoAの発現が顕著に認められた。また,ELIZA法を用いたRhoAの活性レベルの解析結果からも,Sema4AおよびSema4DがHERS01aのRhoAシグナルを活性化することがわかった。
4.HERS伸長過程におけるTGF-βの発現を調べた結果,tdTomato陽性細胞が根尖側のHERSとHERSから離脱していく歯冠側の細胞に観察された。TGF-βは歯周組織全域と歯乳頭とで観察され,特にHERS近傍に位置する象牙芽細胞層には顕著に発現が認められた。これより,TGF-βがHERSの分化に影響を与えていることが考えられた。

Strategy for Future Research Activity

現在の進捗状況から,Sema4D-RhoAシグナルがHERSの上皮性維持に働き,一方でTGF-βがHERSからの細胞遊走を制御していることが明らかとなった。これによりHERSから離脱した細胞は再び集塊しERM形成を行う、という一連のメカニズムの一端を明らかにすることができた。そこで, TGF-βによるEMTがHERSの断裂と遊走を調節するメカニズムの1つであることをふまえ,1)細胞骨格制御に関わる低分子量Gタンパク質の1つであるRho シグナルの低下がHERS細胞のEMTに関連していること,2)Rhoシグナルの制御にTGF-βが関係していること,3)TGF-βの活性化制御に歯根膜線維の形成が関与すること,4)Rho活性化の経路に関わる分子として,PaxillinやSemaphorin,Plexin,LPSといった上流の分子が関与していることを想定して研究を行う。さらに我々のグループは,EMTを負に制御する転写因子Ovol2がHERSに発現していることを発見したことから,これらの上記の分子とOvol2発現の関連性を追求する。
これまで,HERSやERMが嚢胞上皮成分の起源と考えられていたが,それを実証する研究はほとんどない。我々は,HERSやERMの細胞動態や特性をより詳細に解明することによって,慢性炎症のような環境下でのHERSやERMの細胞変化や歯周組織の組織学的変化を実際に観察できる実験系を構築することによって,歯根嚢胞発症のメカニズムを根本から探る研究を行っていく。Rhoシグナルの活性低下がHERSからERMを作るプロセスのひとつであることをふまえ,炎症のような病的な環境下では細胞内Rhoシグナルが,どのように変化するかを分子生物学的に解明すると同時に,実際に動物実験を行いながら歯根嚢胞の発症の実体を解明することを目指す。

Causes of Carryover

昨年度は新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の世界的感染拡大により,国内外での学会がWEB開催となったため,交通/宿泊費として計上していた費用が使用されなかった。次年度の使用計画としては,タンパク質の発現解析に使用する試薬,免疫組織学解析に用いる抗体など,次年度の実験を遂行するために必要な物品経費として使用する予定である。

  • Research Products

    (1 results)

All 2022

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] セマフォリンシグナルは,上皮間葉転換を抑制することでHertwig上皮鞘を維持している2022

    • Author(s)
      東根まりい,池崎晶二郎,熊上深香,稲葉陽,荒井春乃,山田浩之, 大津圭史, 原田英光
    • Organizer
      第127回日本解剖学会総会・全国学術集会

URL: 

Published: 2022-12-28  

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