2022 Fiscal Year Annual Research Report
歯根嚢胞モデルマウスの確立と治療法開発に向けた発症・成長メカニズムの解明
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20K18462
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
熊上 深香 (坂野深香) 岩手医科大学, 歯学部, 常任研究員 (30710826)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヘルトヴィッヒ上皮鞘 / マラッセの上皮遺残 / 歯根形成 / 細胞遊走 / 上皮間葉転換 / partial EMT / 歯原性嚢胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯原性嚢胞(腫瘍)の上皮細胞は、ヘルトヴィッヒ上皮鞘(HERS)あるいはマラッセ残存上皮(ERM)に由来すると考えられているが、嚢胞発症とHERSやERMの細胞特性との関連性は理解されていない。HERS とERM発生との関係が嚢胞発症との病因と深く関連すると考え, SemaphorinとTGF-βによるRhoシグナルを介したEMT制御機構とERMの発生の機構について調べた。 HERS根尖側におけるRhoの活性亢進,Sema4A・Sema4Dの局在の一致から,RhoA活性はSemaphorinの発現と関連していること,また培養細胞株HERS01aにおいて,Sema4A・Sema4DがRhoAの活性を上げ,さらに遊走試験にてcollective cell migrationを示したことから,Semaphorin-RhoAシグナルは上皮性維持に働いていると考えた。HERSから遊走した細胞が免疫組織学的解析からCK14(+)でE-cadherin(‐)であることから, partial-EMTが生じていること,さらにTGF-βはHERS01aのRhoA活性の低下やsingle cell migrationを誘導し,上皮性維持に反してERMの発生に働いていた。以上より,Semaphorinは上皮性の維持,TGF-βはpartial EMTを誘導してERMの発生に働く。 この制御機構の破綻が嚢胞(腫瘍)の発生に深く関わると推測した。さらに,歯原性腫瘍(嚢胞)モデルを作製に蛍光色素tDTomatoを発現する新規の細胞株HERS02Tを作製した。この細胞のRhoシグナルを抑制してヌードマウスに移植すると石灰化と嚢胞からなる腫瘍を形成した。この結果から,嚢胞や歯原性腫瘍の発症,また腫瘍内石灰化など病態の発現とRhoシグナルが関わっていることが示せた。
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