2021 Fiscal Year Research-status Report
口蓋突起挙上における細胞動態および力学的要素のライブ観察による解析
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20K18463
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
長坂 新 明海大学, 歯学部, 助教 (40822474)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 口蓋発生 / ライブ観察 / 組織形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、胎生期マウスの口蓋突起を構成する細胞の動態・形態をライブ観察法を用いて捉え、さらに組織内に存在する力学的要素を把握することで、二次口蓋発生過程における新たな知見を得ることを目的とし、二次口蓋の正常発生機序および口蓋裂発生機序を明らかにすることを目指している。昨年度は、胎生期マウスのライブ観察法の条件検討を行い、口蓋突起の挙上を観察することに成功した。 引き続き、今年度は個々の細胞の動態を捉えることに取り組んだ。組織の変形過程において個々の細胞や細胞集団のダイナミクスが重要であることが知られているが、口蓋突起挙上時における細胞の動態は明らかになっていなかった。本研究では標識試薬を用いて個々の細胞の核を可視化した上で、共焦点顕微鏡によるライブ観察を行った。その結果、挙上が起こる際の口蓋突起の基部付近(変形の起点となる)に存在する間葉系細胞の動態を捉えることに成功した。舌側に存在する細胞はおよそ一方向に移動するのに対し、頬側に存在する細胞は口蓋突起の変形点を中心に放射状に移動することが観察された。昨年度までの結果に加え、今回の観察結果から、舌側では細胞が一方向に移動することで頬側より大きな変形を呈すことが示唆された。また、組織変形に関係する分子であるF-actin、E-cadherin、Ki67の発現局在の変化を免疫組織化学法によって調べたところ、口蓋突起のanterior部、middle部、posterior部のそれぞれにおいて挙上前後で顕著な変化は見られないことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
口蓋突起のライブ観察法に関して、現在論文投稿に向けて準備を進めている。また、細胞動態を観察する実験系に関しては、条件検討の結果、目的に対して適当である方法を確立することができた。 一方で、組織内の力学的な状況の把握に関する実験は遅れている。免疫組織化学法を用いた解析によってタンパク質や転写因子などの発現局在の変化を口蓋突起の挙上前後で観察したが、これはおよそ24時間の時間間隔での結果であり、挙上が始まる前と終了した後での結果である。口蓋突起の挙上は数時間で完了するという報告もあるので、より短い時間間隔(1時間ごとなど)で、変形途中での発言局在の変化を把握する必要がある。また、ライブ観察の際に細胞骨格などの阻害剤を用いた機能阻害実験を行う予定であったが実施できていない。加えて、組織の力学的要素を直接把握することのできる応力解放試験は行えていない状況である。応力解放試験は研究協力者である名古屋大学や基礎生物学研究所で行う予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う移動制限によって実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
口蓋突起の挙上はanterior-posterior軸に沿って、そのタイミングや変形の様式が異なることが示唆されている。本研究は、昨年度までにanterior部分の組織変形および口蓋突起の基部付近の細胞動態を観察する事ができた。そこで、今後はanterior部分の口蓋突起の先端部分までを含む組織全体での細胞動態を観察する。口蓋突起全体で細胞がどのように存在し細胞の移動が起きているのかを把握することで、口蓋突起の挙上という組織変形がどのように達成されているのかを明らかにする。また同様の手法を用いて、anterior部のみならず、middle部分やposterior部分での細胞の動態を観察し、anterior-posterior軸に沿った部位ごとの組織変形の違いの原因を明らかにすることを目指す。次いで、ミオシン阻害剤であるblebbistatinや微小管の重合阻害剤であるnocodazoleなどを併用したライブ観察を行い、口蓋挙上における細胞骨格の関与を調べる。また、微小メスを用いて組織を切開し、その際の組織の変形を観察することで組織内の応力状況を把握する応力解放試験を行う。そして、得られた結果を論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響による。 感染拡大に伴う移動制限によって、予定していた学会への参加や共同研究を行う事ができなかった。また、原材料不足や輸送障害によって、発注した品物が届いていない状況である。 今年度は、感染拡大状況を鑑みつつ、学会への参加や共同研究を行う予定で旅費を計上している。また、実験動物(妊娠マウス)に加え、ライブ観察法や応力解放試験に用いる消耗品(プラスチックの培養器具や微小メスなど)や細胞骨格の機能阻害実験に用いる各種の阻害剤の購入に消耗品費を計上している。そして、その結果をまとめた論文の英文校正料や投稿料に充てる予定である。
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Research Products
(5 results)